「EdTech(エドテック)」という言葉をご存じだろうか。これは、EducationとTechnologyを掛け合わせた造語で、教育とテクノロジを融合させて、新しいイノベーションを起そうとするビジネス領域のことを指す。
教育にテクノロジを活用する概念は以前よりあり、古くはCAE(Computer Aided Education)と呼ばれていた。最近ではeラーニングという言葉が有名だろう。
世界を見渡すと、米国を中心にeラーニング市場は順調に伸びている。その市場規模は、2015年の1665億ドルから17年には2555億ドル規模にまで成長すると予測されている。この成長をけん引するのは、高等教育におけるeラーニング。中でも大学の講座をベースに動画配信するという「MOOC(ムーク)」というサービスが昨今の話題だ。
MOOCは、Massive Open Online Coursesの略語で、大規模かつオープンなオンライン講座を意味する。基本的には無料で、4~6週間開講して修了証が発行される。日本国内でもJMOOC(ジェイムーク/日本オープンオンライン教育推進協議会)では、公認配信プラットフォームを3つほど展開している。その中でも「gacco」は、NTTドコモとNTTナレッジ・スクウェアが共同で推進しており、サービス開始11カ月で10万人以上の会員を集め、のべ受講者数も22万人と非常に伸びている。
ちなみに高等教育eラーニングに次ぐのが、K12eラーニング。これは幼稚園から高校までのeラーニングを意味する。こうした大学までの教育に比べ、企業内でのeラーニングの活用はまだまだ緒についたばかりだ。
また、eラーニングにおいて、どのような技術がよく使われているかと言うと、映像/動画配信システム、およびラーニング管理システム(LMS)がずば抜けて多い。動画とオンラインの相性、さらにオンラインと管理の相性の良さは頷けるところだろう。
日本はどうかと言うと、矢野経済研究所が4月に出した「eラーニング市場に関する調査結果2015」によると、2014年度の見込みは1665億円で、これは前年度から120.8%増である。内訳であるが、BtoC市場が1090億円でBtoB市場が575億円と予測された。
これは、米国発のMOOCの影響を受けて、JMOOCと呼ばれるカテゴリが生まれ育っていることを反映したものと思われる。
国内の教育×テクノロジ市場の歴史を簡単に振り返ってみると、長い間、関係者はそのマーケットを“文教向けビジネス”と呼んでいた。主にこの市場を支えていた商品は、ラーニング管理システム(LMS)。プレイヤーもNTTラーニングシステムズや大塚商会といった大手企業や、オープンソースで開発するSIベンダーが占めていた。そんな時代が実に10年以上も続いたが、2007年くらいからこの市場は縮小傾向にある。
代わって登場したのが企業向けのPC教育の波で、教材コンテンツを配信するサービス提供業者のプレイヤーのネットラーニングやデジタルナレッジ、プロシーズなどベンチャー企業。今でも市場をけん引しているが、さらにこの流れの中に登場したのが先ほどのJMOOCだ。つまり、独自開発のコンテンツだけでなく、大学にある有益なコンテンツを広く配信していこうという動きであり、NTTドコモ、NTTナレッジ・スクウェア、放送大学などが主なプレイヤーとなって、国内の産学連携によるオンライン教育プラットフォームを作り上げている。
このMOOCが、EdTechといわれる新しい流れの本流の1つだが、さらにもう1つ、学びを促進させるようなさまざまなアプリケーションをゲーム感覚で開発して提供しているベンチャー企業の動きも活発化している。そこに、サイバーエージェントやミクシィ、DeNAといったゲーム配給プラットフォーマーなどが参入して、その動きを加速させている。
また、最近の話題で言えば、CtoCの世界で最大規模のオンライン教育プラットフォームを持つudemyが、ベネッセと提携して4月に日本市場に参入した。全世界での規模は、2万5000以上のコースを有し、受講者数は600万人を超えるといわれる。
サービス提供業者のプレイヤーで見ると、BtoCの有料モデルで展開するNTTナレッジ・スクウェアの「N-Academy」がある。こちらは会員数23万人、講座数は200程度で、資格系講座が充実し、その道のプロに学べるというのを売りにしている。さらに、無料動画のオンライン学習サイト「schoo WEB-campus」も16万人の一般会員を集めている。
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