日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC、ジェイムーク)は4月14日、大学の講義を無償で受けられるオンライン講座「MOOC(Massive Open Online Course、ムーク)」を開始した。NTTドコモが構築したプラットフォーム「gacco」などで、大学教授らによる講義が順次開講する。
MOOCは、主要大学や有名教授による授業をオープンなオンライン講座として公開するサービスで、2012年から米国などで急増している。代表的なMOOCである「Coursera」や「edX」には、米国だけでなく欧州やアジアの大学も参加しており、受講者に正規に単位を付与する大学や、認定資格を企業の採用基準として活用する事例も出てきているという。JMOOCでは、日本においてこうした環境の構築を目指す。
14日には3つの講義が始まった。gaccoではその内の1つ、東京大学の本郷和人教授による講義「日本中世の自由と平等」を公開。画面半分に講義の資料を映し出し、本郷氏は受講者に語りかけるような口調で講義を進めた。「ただの暗記ではなく、歴史学者が持つ研究スタイルを理解してほしい」と、学習目標や内容には本郷氏の意向を反映しているという。講義での疑問点や学習した内容は、gaccoの掲示板を使い、教授や運営スタッフ、他の受講者らとディスカッションして理解を深められる。「これにより、ソーシャルラーニングが可能になる」とNTTドコモの伊能美和子氏は話す。
講座は約1カ月間続き、受講者は1週間ごとにクイズ形式で出される課題を提出する。講義によっては最終講義後に修了試験が設けられており、一定の成績に達していれば修了証を得られる。
同講義は受講生を事前に募集しており、14日時点で1万人超からの応募を受け付けた。また、オンラインで学習した内容をもとに対面で発展的な講義を行う「反転学習コース」には、定員の100人を超える約140人からの応募があったという。なお、gaccoの総会員数は2万3955人で、平均年齢は46歳(男性47歳、女性42歳)。全体の7割が男性、3割が女性とのこと。
JMOOCが公認したもう1つのプラットフォーム、放送大学による「OUJ MOOC」では、岡部洋一学長による「コンピュータのしくみ」と、山田恒夫教授による「にほんごにゅうもん(英語版)」を公開した。動画とテキストを交互に配した電子教材で学習する形式で、教材は受講者のFacebookタイムラインに定期的に配信する。また、講義のFacebookグループでは、gaccoと同じく受講者らでのディスカッションが可能だ。
MOOCの最大の利点は「講義が双方向的であること」と岡部氏。「MOOCでは、一方的に話をするわけではなくて、受講者からのレスポンスをもらいながら講義が進んでいくことになる。また、学習者同士でディスカッションができるため、教育的効果が高い」と語った。
JMOOCでは「提携大学100校」と「利用者100万人」を目標に掲げる。今後、大学講義だけでなく、高校生以下向け、企業内向け講義なども検討する予定で、事務局特別会員のネットラーニングが今秋にも、独自のシステムで社会人向けの講義を公開予定としている。
JMOOC理事長の白井克彦氏は、世界でMOOCに関心が集まっている理由は「高等教育の大衆化にある」とし、「MOOCは新しい学習、教育方法として、グローバルに通用する内容を人類全体に提供できる手段である」と語る。「MOOCは大学や国を超えたオープンな枠組みとして、世界中で発展していくと考えられる。JMOOCとしては今後、グローバルな視点でサービスを運営しつつ、日本の地域社会や少子高齢社会の問題への役割も果たしたい」(白井氏)
今後公開される講義には、「インターネット(慶應義塾大学)」や「国際安全保障論(早稲田大学)」のほか、「服飾の歴史と文化(文化学園 )」や「マンガ・アニメ・ゲーム論(明治大学)」なども予定されている。
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