このように女性が働きやすい環境が整っているシンガポールですが、それは「女性も働き続けることが常識」という社会であり、そこから問題が生じているのも事実です。問題となっているのは、日本と同様、少子化が進行していること。
特殊出生率(一人の女性が一生のうちに出産する子供の平均数)を日本と比較してみると、以下のような結果となっています。
*15-49歳の女性対象(2013年、世界銀行調べ) シンガポール:1.29 日本:1.43
アジアでも突出して低い出生率の対策として、テレビで子供を作ろうという政府のCMが流れることもあります。
さて、上記を踏まえ、身近にいる「働くシンガポール女性」3人に質問をしてみました。
――あなたが働く目的は何か。
「お金のため」(3名)。
――上記質問に対する多くのシンガポール女性の回答は何だと思うか。
「お金のため」(3名)。
――もし1000億円を持っていても働きたいか。
「いいえ」(2名)、「はい」(1名)。
このように、働くことはやりがいやスキルアップではなく「お金のため」が第1位になりました。彼女たちが働く第一の目的をお金と答えた背景として、シンガポールの物価の高さが挙げられます。
実際にシンガポールに住んでいると、ものすごい早さで物価が上昇していくことを感じます。そしてこのような回答になるのは、日本とは違って、働かないという選択肢を取りにくい状況であることの表れのようにも感じます。
彼女たちの1人から、子育てと昇進のジレンマについても本音を聞くことができました。
「長ければ10~12時間勤務する。家に帰ると、子供たちからの要求に答えたり、一緒に過ごす時間を持ったり、メイドには果たすことのできない母親としての責任がある。一方で、子持ち女性が社会的偏見に悩むことなく半日勤務などの制度を利用している国もある中、シンガポールではそのような制度を利用することは“弱さ”とみなされ、昇進にも影響するといった現実がある」
女性が働きやすい環境が整っているとされるシンガポールにおいても、実際に子育てをしながら働く女性にとっては表面化されていない問題もあるようです。
シンガポールは物価の上昇が続く一方、最低賃金は低いまま上昇しておらず、子育てにはお金がかかります。彼女たちの回答からは、いくら環境が整っていても、この問題をクリアしない限り少子化問題は解決しないのではないか、という懸念を垣間見ることができました。
本質的には、男女に関わらずそれぞれの国民が、働きたいのであれば働きやすい環境を整えることが重要です。そのためには、女性の“活用”といった男性目線の考え方ではなく、男女のそれぞれの特性を認識した上で、機会、チャンスを公正に提供することが大事だと考えられます。
故リー・クアンユー氏が目指した社会も、「全ての国民にチャンスを与え、機会は均等にする。ただし評価は平等ではなく、成果を出したものにそれなりの見返りを与えよう」というものだったはずです。
トレードオフになりがちな女性の社会進出と少子化のジレンマについてなかなか答えは見えにくいですが、シンガポール政府が今後どういった施策で課題を解決していくのか、日本も注目すべき点となります。
最近、日系ラーメン店のつけ麺にハマっています。
外は暑い、中は冷房で寒いシンガポールでは、麺は冷たく、つゆは温かいつけ麺が丁度よいです。何軒かあるので、いろいろ試してお気に入りを見つけたいと思います。
2006年アウンコンサルティング入社。
検索エンジンマーケティング(SEM)における新規顧客開拓を担ったのち、SEMコンサルタントとして大手プロバイダや不動産などを中心に企業のマーケティング支援に従事。
その後、沖縄支店およびアウンタイラボラトリーズのヘッドマネージャーとして、現地法人運営と現地スタッフの育成、売上拡大における販売戦略の立案と実行を行う。
現在は海外拠点、アウングローバルマーケティング(シンガポール)とアウン香港マーケティングのマネージングダイレクターを兼任し、幅広い業種・業態のSEMを含む、グローバルマーケティング活動の支援を行う。
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