logo

「スマートBBQカー」に「乗らず嫌い試乗会」--日産の“攻める”ソーシャルメディア戦略

藤井涼 (編集部)2015年04月27日 08時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 BBQに必要な機材がすべて収納された電気自動車の開発資金をクラウドファンディングで募集する「究極のスマートBBQカー」や、Facebookで否定的なコメントをしている人を集めた「新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会」など、ネットを絡めた斬新なプロジェクトを次々と打ち出し、“クルマ離れ”と言われて久しい若者世代からも話題を集めている日産自動車。

  • NissanのFacebookページでの投稿

 同社はソーシャルメディアの運用にも力を注いでおり、Facebookページでは1日に1~2回の投稿を続けている。その内容を見ていくと、季節ごとのクルマに関するトリビアやクイズ、イベントレポートなど、テレビCMや店頭でのプロモーションの“焼き直し”ではない、手の込んだコンテンツであることが分かる。同ページのフォロワー数は80万に迫る勢いで、競合のトヨタ自動車やHondaと比べても圧倒的に多い。

 こうした企画やSNSへの投稿内容を継続的に考えることも大変だが、2万人以上の従業員を抱える大企業であり、クルマという高価な商品を取り扱う日産において、社内の理解を得ながら実際に“実行”することは容易ではないはずだ。なぜ、同社はこれほどまでに挑戦的かつ積極的にウェブマーケティングに取り組むのか――日産自動車 マーケティング本部 販売促進部の冨井祐樹氏に聞いた。


日産自動車 マーケティング本部 販売促進部の冨井祐樹氏

日産に“興味がない顧客”とも接点を

 日産がソーシャルメディアを活用して本格的な企画やプロモーションを開始したのは2012年6月。「日産に興味を持っていない顧客とも接点を作っていきたい」という思いから、編集長に放送作家の鈴木おさむさんを迎え、ソーシャルメディアを使ったプロジェクト「にっちゃん(「日産の本気の新しいチャレンジ」の略)」を発足させた。

 にっちゃんでは、約2年半で数々の話題になったプロジェクトを展開。日産の技術力やこだわりを真正面から伝えるものから、クルマを持っているとモテるのかを追求する「検証!クルマで人はモテるのか?」といった“おバカ”なものまで、毛色の違うさまざまなプロジェクトを企画して実施してきた。

 中でも反響が大きかったのがセレナの「HAPPY SURPRISE」。11年間ちゃんとプロポーズをしていなかった夫が妻にプロポーズをすると、駐車していたミニバン「セレナ」の中から友人や親族が次々と登場してパレードで盛大に祝うというサプライズ企画だ。このストーリーは多くのユーザーから共感を得ることができ、動画の視聴回数は100万を超えた。


社内全体で作り上げるプロジェクト

 これらの企画はどのようにして生まれているのか。日産では、社内で随時アイデアを募集しており、月に1度の企画会議で、集まったアイデアなどから次のプロジェクトを決めているのだという。

 この会議には、冨井氏を中心に販売促進部、宣伝部、広報部、デザイン部、ライセンス管理部など各部門のキーマンが集まり、関係各所との調整役も担う。また、社内会議とは別に鈴木おさむさんが編集長を務める数名の「にっちゃん」チームで月に1度編集会議を開き、SNSへの投稿内容や、より詳細なプロジェクトの内容を決めていくという。

 ただし、これだけ大所帯の企業だ。当初は奇抜なプロジェクトなどには難色を示す社員もいたという。しかし、SNSや社内外でのプロジェクトへの反響を実際に見聞きすることで、いまではほとんどの社員がプロジェクトに協力してくれる。むしろ「にっちゃんなら自分たちの取り組みを面白く紹介してくれるかもしれない」と、各所からの持ち込みも増えているそうだ。


「にっちゃん」が手がけてきたプロジェクトの一例

 ところで、企業のソーシャルメディア運用は担当者に依存してしまい、引き継ぎが上手くいかずに更新やプロジェクト自体が止まってしまうといった話はよく聞く。しかし、先述したように日産では各部署が密に連携しているため、仮に中心となる担当者が異動してしまっても、プロジェクトや会議を維持できる体制が揺らぐことはないという。実際、現在のソーシャルメディア担当の冨井氏も、担当になったのは2014年からだが、すでに多くの企画を世に出している。

クラウドファンディングで作る「究極のスマートBBQカー」

 数多くのプロジェクトを経て直近に実施されたプロジェクトが、冒頭で紹介した「究極のスマートBBQカー」と「新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会」だ。

 「究極のスマートBBQカー」は、“電気自動車が未来のクルマ社会のスタンダードになる”という同社の信念の下、電気自動車の可能性とその楽しさを訴求するためのプロジェクトだ。1000W×8時間の電力使用が可能な電気商用車「e-NV200」をベースに、誰でも簡単、快適、そしてエコなBBQが実現できるクルマを開発。トランクを開くだけで、大胆なギミックでかっこよく完全なBBQ装置一式が現れる。


「究極のスマートBBQカー」プロジェクト

 このクルマに、さらなる夢のような機能を搭載するために活用したのが、インターネットを使って不特定多数の賛同者から得られる資金によって開発するクラウドファンディングサービス。100万円の支援が集まったら「Flying Selphie Camera(フライングセルフィー)」、300万円が集まったら「Mosquito Barrier System(蚊バリア)」、600万円が集まったら「Smartphone Linked Display(スマホ連携ディスプレイ)」など、段階的に機能を実装することを発表した。

 このスマートBBQカーの資金をクラウドファンディングで集めるというユニークなアイデアは、ネットユーザーを中心に話題となり、最終的に当初の目標である100万円を超える110万5000円が集まった。そのため、カメラ搭載型ドローンが参加者の自然な笑顔を空中から撮影するFlying Selphie Cameraの実装が決定している。


 冨井氏によれば、スマートBBQカーは日本国内のみならず、海外のユーザーにも好評だったという。「欧米にはBBQが好きな人が多い。それを見越して、プロモーション映像も英語ベースで作り日本語字幕を表示していたが、現地の日産のEV(電気自動車)担当者などからも動画素材をくれないかという問い合わせがあるほど反響があった」(同氏)。

 4月25日には幕張メッセで開催された巨大フェス「ニコニコ超会議 2015」で、料理愛好家・平野レミさんがこのスマートBBQカーを使って料理を披露した。今後は、支援者をBBQパーティーなどに招待するほか、引き続き大型イベントや展示会にスマートBBQカーを出展する予定だという。

  • 「ニコニコ超会議2015」に展示された

  • スマートBBQカーの使用イメージ(NissanのFacebookページより)

  • 平野レミさんがオリジナル料理を披露した(NissanのFacebookページより)

-PR-企画特集