「スマートBBQカー」に「乗らず嫌い試乗会」--日産の“攻める”ソーシャルメディア戦略 - (page 2)

アンチをアンバサダーに変える「新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会」

 そして、もう1つのプロジェクトが「新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会」だ。同社は2014年2月に新型の「スカイライン」を発売したが、公式Facebookページに新型スカイラインの記事を投稿するたびに、「価格が高い」「スカイラインにハイブリッドはいらない」「なぜ丸テールランプじゃないのか」といった、1000件を越えるネガティブなコメントが寄せられていたという。


「新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会」

 そこで、にっちゃんではこれを逆手に取って、ネガティブなコメントを投稿するアンチユーザーのみを集めた試乗会を企画。実際に試乗してもらうことで、新型スカイラインの目指す方向性などを伝えることにした。「コメントを残してくれるということは嫌いであっても興味はあるということ。試乗してもらうことで全員が態度変容しなくても、アンチの人に少しでも魅力が伝わる様子は、乗れば良さが分かるクルマということを訴求する、1番のコミュニケーションになると思った」(冨井氏)。

 ただし、試乗会が実現するまでの道のりは平坦ではなかった。日産にはユーザー以上にスカイラインへの思い入れが強い社員も多い。そのため、関係各所からはプロジェクトについて「炎上するのではないか」と危惧する声もあったというが、各担当者に丁寧に趣旨を伝えながら説得した。その結果、開発責任者やテストドライバーで「現代の名工100人」にも名を連ねる加藤博義氏までが参加することとなった。「エンジニアたちはものづくりに自信を持っていて、本当に良いクルマだということは彼らが一番伝えたいこと」(冨井氏)。そのため、一度協力すると決めてからは心強い味方になってくれた。


 そして当日は、招待された8組14人のアンチユーザーが、新型スカイラインを試乗。「0~100km/h体験」や「最新の安全装備PFCW(前方衝突予測警報)チャレンジ」などのメニューを通して、新型スカイラインの性能を体感した。その結果、14人のうち9人が「加速力に驚いた」「ロングドライブでも疲れないかも」といった好意的な意見に変わり、期待以上の成果が得られたという。

 さらに、試乗会の動画を公開したところ、Facebookでの新型スカイラインに対する意見も、好意的なものが増えてきたそうだ。「少人数ではあるが、ユーザーに直接体験してもらうことの大切さを社内で実感できた。ソーシャルメディアはバーチャルな取り組みだが、そこからリアルに戻って、フェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションすることが重要」(冨井氏)。

クルマを買う時に「思い出してもらえる会社に」

 「日産に興味を持っていない顧客とも接点をつくっていきたい」という思いから立ち上がったにっちゃん。これまで実施してきたプロジェクトが、同社の売上げにどれだけ貢献したかは定かではないが、メディアで取り上げられたり、SNSで拡散されたりすることで、同社を認知したり好意的に受け止めるようになった消費者が増えていることは間違いない。それは、Facebookページの80万人というフォロワー数を見ても分かるだろう。

 また、都心部では実際に若者の“クルマ離れ”が起きているというが、それでも結婚して子どもが生まれる際などにはクルマの購入を検討している人は多いと冨井氏は話す。「どこのメーカーがあるんだっけと考えた時に、日産が面白いことをやってたなと思い出してもらえるような活動を続けていきたい。」(冨井氏)。

 現在は、社内やにっちゃんチームでの企画会議を通じてアイデアを出しているが、今後は乗らず嫌い試乗会のように、Facebookページのフォロワーの意見などを起点にしたプロジェクトも企画していきたいと冨井氏は話す。「本当の意味で顧客の意見を生かしたり実現したい。(にっちゃんを発足した)1年目だったら難しかったかもしれないが、いまの日産ならそれができる」(冨井氏)。

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