長澤氏:我々はあくまでも「自主ガイドライン」。求めている内容は、すでにマスメディアは当然のこととしてやっていることだ。それが一部のネットメディアはできていない現状がある。
ネット広告の信頼性、ネットメディアの信頼性がまだまだマスメディアに劣っているということでもある。これは東大の橋元先生が発表している資料(下図)を見れば明確に差があることがわかる。スマートフォンの急拡大にも追いついていない。早急に信頼性を獲得するには、やはり業界として自主ガイドラインの普及を進めなければだめだろう。
JIAAとしては、大きく4つ課題があると思っている。1つは、タイアップ記事が、その体裁によってはステマのように感じられてしまうという不信感の問題。2つ目が、個人に関連する情報の利活用における、ユーザーの不快感をどう解消するか。
3つ目は、ネットメディアはスマートフォン向けを含めて多数のメディアがあるが、その中に不健全、アンモラル、違法なサイトがあり、そこに広告が掲載されてしまっていること。これはアドテク独特の仕組みによるものだが、対策を講じる必要がある。不正サイトに関しては、警察庁などから情報を提供いただき、会員社は当該サイトに広告を掲載しないよう対応に努めている。
4つ目はステマそのものや不正広告の問題。これらがネット広告全体に不信感を与えていると考えている。これはネイティブアドの前からある話。JIAAは設立当初からマスメディア各社やポータルなどの大手企業、広告の審査体制がしっかり整っている企業がコアになって、それらを防止するよう掲載基準ガイドラインを策定してきている。今回、ネイティブアドの規定が初めてだと思われる方も多いが、そうではない。
ガイドラインは会員社を対象にしたものではあるが、ウェブサイトで公開しているものであり、多くのネットメディアは、それを見て自社の基準を作る流れになっている。その中で今回、ネイティブ広告、特にスマートフォンにおいてのインフィード型広告など新たな形式の広告にも広告表示が必要であることを打ち出した。
会員に対しては、ガイドラインの内容について「遵守を強く推奨」している。ガイドラインは毎回、改定に至る過程のなかで、プレイヤー間で議論を重ねた上で作り上げている。今回のガイドラインも、幹事や事務局が一方的に作成したものではなく、各社で合意したものだ。詳しく言えば、合意後、理事会での審議を経て、全会員社に意見を求めた。それを反映したり、回答したりする形で取りまとめて、発表に至った。
会員社内では周知されているし、合意形成できている。非会員の事業社に対しても、業界の基準として推奨しており、公開しているガイドラインを参考にしてもらいたい。
最近では日本アドバタイザーズ協会(JAA)にも連携を働きかけている。広告主には、ネイティブ広告という手法を評価して、新しい効果のある広告としてトライしてほしいと考えている。そして、ガイドラインの主旨、具体的には「クレジット(広告記事であることを示すもの)を記事から外してほしい」といった要求がルールに外れるものであることを伝えていく必要がある。
ネイティブアド研究会はこれまで会員のみでクローズドにやっていたが、前回の会合は、JAAのご厚意もあってJAA会員である広告主企業も参加いただいた。今後も、業界全体に向けた説明会、勉強会を一緒に開くことを検討している。あくまでも自主ガイドラインなので、周囲の理解を深めていかなければならない。
日本新聞協会や日本雑誌協会、日本広告業協会などとも連絡をとっている。我々だけではなくて、業界全体として、ネイティブ広告のマーケットを健全なものに育てていこうという動きをしている。ステマ事業社や意図的にノンクレジットで広告コンテンツに誘導するメディアは、JIAA会員ではなくとも業界全体のモラルに反するということで、なるべく是正されていくような環境を作る方針をとっている。
今回あまり注目されていないが、推奨規定で広告配信事業者も広告を審査することを盛り込んでいる。これはマスメディアにはない特異な点で、業界の中では大きな話だと思う。現在も大手事業者は審査をしているが、業界全体で見るとまだ審査の体制が足りていない。
RTB(リアルタイム入札)で広告が配信されると、掲載媒体社が審査をする時間がない。そのため、枠を調達して掲載に至るまでの段階で、できるだけ審査過程を入れることが望ましい。広告配信事業社に対し、ネイティブ広告のネットワーク配信でも審査基準を設けて審査をするよう推奨している。
――ガイドラインが守られないとどうなるのか。
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