モノのインターネット(Internet of Things:IoT)が現実になるのはまだずっと先のことだが、大きく成長する可能性を秘めたこの新市場でシェアを得ようと、チップメーカー各社は策を巡らせている。
1月にラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)は、モノのインターネット(さまざまなデバイスやモノをウェブに接続するというアイデア)の話題であふれていた。その短縮形である「IoT」や、自動車、衣服、コーヒーメーカーと人の関わり方が変わる可能性に言及しなかったブースや記者会見は、ほとんど見当たらなかったと言っていいほどだ。
そのコンセプトを現実にするためにやるべきことはまだまだ山のようにあるが、チップ企業各社はこの初期の分野にひるむことなく飛び込んで、あらゆるものがウェブに接続された世界がどのようなものになるのかを定義しようとしている。その取り組みはハイリスク、ハイリターンだ。成功したチップメーカーは、大きな利益が見込まれる新市場で決定権を握ることになるだろう。一方、後れを取った企業はその他大勢に落ちぶれてしまう可能性がある。
「楽しい時代になった。私たちは今、陣取り合戦のまっただなかにいるからだ」。調査会社GartnerのアナリストであるAlfonso Velosa氏はこのように述べた。
IoTの定義はさまざまだが、詰まるところ、考え得るあらゆるモノにスマート機能とインターネット接続機能を追加するということだ。そのコンセプトは、スマートシティからコネクテッドカー、ワイヤレスヘルス、ウェアラブルテクノロジまで、多くの業界に応用される。
IoTは多数の有力企業を引き寄せてもいる。Appleはスマートホームプラットフォーム「HomeKit」をひっそりと推し進めている。Google傘下のNestは初期IoTデバイスの代表例のような製品をいくつか販売しており、自己プログラミング機能を搭載するサーモスタットや、ユーザーのスマートフォンにアラートを送信できる煙探知機を提供している。サムスンは、自社が販売するすべての製品を2020年までにインターネットに接続すると宣言した。ややニッチな製品の例としては、AugustのコネクテッドドアロックやQuirkyの漏水センサなどがある。今後、IoTデバイスが増加するにつれて、デバイス同士の通信が可能になり、住宅、オフィス、工場でさらに多くの機能が自動化されていくだろう。
この戦いをチップレベルで見ることには意味がある。プロセッサ、無線チップ、メモリチップを製造するチップメーカーは、IoT市場全体の基礎を築いているため、チップメーカーに注目することで、来たるべき新世界を一足先に垣間見ることができるからだ。
多くのチップメーカー幹部が、補足的な研究開発を少し行うだけで、既存のテクノロジを新しい業界に売り込めると述べている。
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