「コカ・コーラ Friendly Twist」のストーリー

 企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 2013年度、コカ・コーラは世界各地で「Happiness」をテーマにしたプロモーションキャンペーンを実施しました。

 その中のひとつ、コロンビアのとある大学で実施した「コカ・コーラ Friendly Twist」には、多くの人々の感情を刺激するストーリーがありました。

 このプロモーションは、大学に入学したばかりの新入生に向けたもの。コロンビア各地から来た新入生は、まだ友達がおらず、キャンパスでは多くの学生がひとりでスマホをいじったり音楽などを聴いています。本当は誰かに話しかけたいのに、ちゅうちょしているのかもしれません。

 そこに特大の冷蔵庫が設置されます。冷蔵庫の中にはコカ・コーラのペットポトルが大量に入れられています。コーラは学生たちが自由に持っていけるようになっているのですが、キャップを普通に手でひねって開けようとしても開きません。

 キャップが特別な構造になっていて、1本では開けることができないのです。もう1本のコーラを用意し、キャップ同士を重ね合わせ、ボトル部分を持って「お互いが違う方向にひねること」で始めて開けることができる仕組みになっています。

 しかし、その仕組みの説明は書かれていないので、最初、学生たちはどうすればいいか、とまどい首をひねります。

 やがてひとりの学生が、キャップにあった矢印と「The Friendly Twist」(友達と回して)と書かれている文字に気付きます。その学生は近くにいる人に「一緒にまわさない?」と声をかけ、協力してお互いのコーラを開けます。これがきっかけになり笑顔が生まれ、自己紹介が始まり、会話が始まりました。

 同じようにキャンパスのあちらこちらで、学生同士の会話が始まっています。一緒に協力してコーラのキャップを開けることで、新しい友達関係がスタートしたのです。

 このプロモーションの様子をまとめた動画は数多くの人に再生されました。


 コーラを通じて、知らない人同士を繋げHappyにするというアイデアとストーリーに、多くの人の心が動かされてシェアされていったからです。

 コカ・コーラは、世界各地で人を幸せにするプロモーションを実施していますが、いずれもストーリーがあって観ていて心が温まります。まとめサイトもあるので、興味のある方はネットでぜひ探してみてください。

 このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタープロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。最近は広告制作に留まらず、「ストーリーブランディング」の第一人者として、様々な企業のコミュニケーション戦略をサポートしている。近著『物を売るバカ』(角川oneテーマ21)ヒット中!

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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