決め手は位置情報--アイリッジ・小田代表に聞く「O2O最前線」(後編) - (page 2)

磯雅範(カケザン)2014年12月19日 11時00分

消費行動を総合的に判断してレコメンドする

 現状では、O2O以上にオムニチャネルという言葉がよく使われる傾向にある。これは前回も説明したように、店頭への送客だけでなく、いかにシームレスに店頭とECをつなげ、顧客接点を広げていくかということを意味する。

  • 著者の磯雅範

 ここで大きなポイントとなるのがCRMだ。顧客とのリレーションシップをどのように育て、顧客の生涯価値を高めていくか。その点でもO2O施策は有効だ。

 「従来の、電子メールを主なタッチポイントとしたCRM施策と、O2Oをからめた施策のどこが違うかと言うと、デバイスが変わったこと。フィーチャーフォン全盛の時代は、もちろん携帯メールもあったわけですが、まだまだPCが主流でした。しかし、スマートフォンが普及したことで、確実に外で、移動中にもメールを開封し見るようになったわけです。再三言っている位置情報の取得によって、その人が今どこにいるのかがわかる。これをさらに突き詰めると、少なくとも技術的には、その人が同じ商業施設でも、どこによく行くのかを把握できる。つまり、CRMの効きをよくするための情報に、購買情報やサイト閲覧情報だけでなく、来店後の行動特性も追加できるようになるわけです」(同氏)。

 そうなれば、精度の高い、つまりはコンバージョン率を高めたターゲティングができるようになる。

 「当然ながら、企業側はさらに売上を上げることのできるツールとしてO2Oをとらえています。どうすればいいかと言えば、コンバージョン率を高めることに尽きる。適切なターゲティングが命ですから、情報の豊富さと的確さが求められます。一方、ユーザーの望みは余計な情報は来ない、自分にとって必要な、快適な情報だけが欲しいというものでしょう。両者は同じ意味です。つまり、的確なターゲティングをして、適切な時間に適切な情報をできるだけOne to Oneで届けるということに尽きるわけです」(同氏)。

 DMPという考え方がある。これは大きく2つに分かれるが、1つは広告配信の仕組みとしてのDMPで、「枠ではなく人に」対して広告配信をする仕組みを指す。もう1つがプライベートDMPと呼ばれるものだが、これは企業が自社サイトへのアクセス履歴やPOSデータなどさまざまな自社の保有するマーケティングデータを集約して、ターゲティングに活用することを言う。

 つまり、O2OにおいてもこのDMPを重視し始めたと言ってよさそうだ。「購買情報との紐づけはまさに、今の課題です。紐づければ紐づけるほど、ターゲティングの精度は高まります。そして位置情報もより深化していくことが求められると思います。この人はどの街によく行くのか、どの店に何回来ているのか。そうしたことをトータルでとらえて分析することで、より精度の高いマッチングが可能になるわけです。私たちもその部分にさらに磨きをかけたいと思っています」(同氏)。

 「結局、O2Oを進化させるということは、ショッピング全体の最適化を推し進めることだと思います。そのために必要なのが、やはり店舗行動もECでの行動も含めた情報の統合化です。私たちもレコメンド・プッシュというサービスを試験的にスタートさせています」(同氏)。

 これは、NTTデータとアイリッジ、そしてレコメントエンジンのナビプラスの3社が共同で行うサービスで、消費者のECの行動でターゲティングをした情報を位置情報によってスマートフォンのアプリに配信するというものだ。たとえばネット通販でTシャツをメインで購入しているアプリユーザーが来店した際には、その店舗で購入できるTシャツの新作をレコメンドする。

 「さらにECサイトの場合は、リアル店舗と違って閲覧履歴も残るので、実際に購入したかどうかだけでなく、何に関心を持っているかも想像できるわけです。だから、むしろ店頭以上に精度の高い情報を得ることができます。それをECのレコメンドだけでなく、店頭におけるレコメンドにも活用するというわけです。そうすれば、購買率も高まるはずです」(同氏)。

 ECでの購入や閲覧情報、さらに店頭での行動履歴を総合的に活用して、少しでも精度の高い情報を的確なタイミングで提供する。そうやって顧客体験価値を上げて、コンバージョン率を高める。位置情報を駆使してクーポンの配信やレコメンド情報を、One to Oneで提供する。小田氏は、O2O施策の目的をここまで整理してくれた。非常にわかりやすいと思うのだが、皆さんはいかがだろうか。

(執筆:カケザン Chif planner/CEO 磯 雅範)

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