10月、サンフランシスコで個人間の宿泊施設仲介サイト、Airbnbを合法化する条例が通過した。ホテル業界だけでなく、アパート協会を含む長期賃貸物件経営の大家ら、住宅街の治安悪化を恐れる地域自治会、短期賃貸物件が増えて長期賃貸物件が減り家賃の高騰を懸念する低所得者住宅支援団体などの反対に遭い、合法化には2年を要した。
既存の条例では、短期賃貸は商業行為と見なされ、住居専用地域では許可が下りず、合法化するために用途地域(ゾーニング)に関し条例が変更された。短期賃貸は年間最高90日までと制限付きだが、賃貸期間中、貸し手が物件に滞在する場合、つまり自宅の一部を貸す場合は制限なしに貸すことができる。また、短期賃貸を行うには、貸し手は市への登録(登録料50ドル)、宿泊者から宿泊税の14%徴収、賠償保険への加入が義務付けられた。
創立から6年、190カ国の3万以上の都市で80万以上の宿泊施設を掲載するAirbnbだが、国にかかわらず大半の都市では、住宅地域で許可なしに宿泊税を払わずに商業宿泊施設を営むのは違法だ。四方八方から違法営業を取り締まるようつつかれながらも、個人宿泊施設営業が既成事実化してしまった今、条例を変更することで、純粋に自宅の一部を旅行者に貸し出す市民に対しては便宜を図ろうという自治体が欧米では現れている。
サンフランシスコに先駆け、オレゴン州ポートランドでは、7月に一戸建ての部屋の短期賃貸を合法化している。ただし、賃貸前に認可申請料178ドル、物件検査、隣人らへの通知を義務付けている。
オーナーが9カ月以上居住していない一戸建て丸ごとの賃貸や、州の建築基準の下、商業宿泊施設と同等の安全基準を満たせないと思われるアパートやマンションの短期賃貸の合法化は見送られた。しかし、同市では集合住宅の短期賃貸も合法化される予定で、やはり年に9カ月以上居住し、大家やマンションの管理組合が許可すれば、賃借人がアパートを賃貸することも可能になるという。
ポートランドでも、Airbnbが宿泊客から宿泊税を代理で徴収することで合意したが、今のところ貸し手の身元は市には明かされていないため、宿泊税がちゃんと支払われているかどうかを市が確認することはできない。
同市では8月末までに短期賃貸物件の登録が義務付けられたものの、Airbnbでの掲載物件1600以上のうち、11月までの申請数は81件で、認可数は43件にとどまっている。今のところ近隣者からの苦情が出ない限り、市では積極的に違反者を摘発していないが、Airbnbで市の許可番号を掲載していない貸し手には500ドルの罰金を課す規定を加えようという声も上がっており、同市最大手ホテルの客室数の倍以上という掲載物件に対し、課税強化の動きもある。
ニューヨークでは、Airbnb掲載物件の7割以上がゾーニングや集合住宅の法律に違反し、違法ホテル業者の物件が3割を占める。見知らぬ者同士が部屋をシェアする違法ホステル業が横行していると、州司法長官がAirbnbを提訴していたが、Airbnbが顧客(貸し手)リストを開示することで和解した。しかしAirbnbは、開示に対し顧客らから提訴されている。
ニューヨーク市では2011年より、居住者が物件に滞在する場合を除き、集合住宅での30日未満の賃貸が禁じられているが、Airbnbでは「居住者滞在」の制限を排除し、自宅であればいつでも貸し出すことを目指している。ただし、合法化されても、大家やビルオーナー、管理組合が短期賃貸を許可しないだろう。何かあったときに罰金を課されるのも、賠償問題が生じた際に訴えられるのもオーナーである。
同州での戦いで、Airbnbでは州議会でのロビー活動に年間12万ドルと、他市の倍以上を費やしている(同社の公共政策責任者は米上院議員の元秘書だ)。なお、全米有数の観光地であるニューオリンズでは、7月に、一部の地域を除き30日未満の無許可ホテル業が禁止された。つまり、Airbnbに掲載されている短期賃貸は違法なのだが、今も多くの物件が掲載されている。
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