昔感じた衝撃を立体視で再現--セガ3D復刻プロジェクト・アーカイブスのキーマンに聞く

 かつて遊んだ疑似3Dゲームを本物の3Dで再現──セガは12月18日、ニンテンドー3DS用ソフト「セガ3D復刻アーカイブス」を発売する。価格はパッケージ版とダウンロード版ともに税別で3980円。これは同社が3DS向けに展開していた「セガ3D復刻プロジェクト」のタイトルから6本とおまけソフトを収録したタイトルとなっている。

 3D復刻プロジェクトは同社の往年の名作を、3DSの特徴でもある立体視に対応して復刻したダウンロード専売ソフトのシリーズ。2012年12月に「3D スペースハリアー」をリリースしたのを皮切りに、「3D スーパーハングオン」、「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」、「3D 獣王記」、「3D エコー・ザ・ドルフィン」、「3D ギャラクシーフォースII」、「3D ザ・スーパー忍II」、「3D ベア・ナックル 怒りの鉄拳」、「3D アフターバーナーII」、「3D ファンタジーゾーン オパオパブラザーズ」、「3D アウトラン」、「3D ファンタジーゾーンIIダブル」、「3D サンダーブレード」を配信。復刻タイトルとして昔ながらのゲームを楽しめるほか、多数の追加要素を搭載しているのも特徴。前半8本を第一期、後半5本を第二期として展開し、現在のところ、この13本でシリーズは一区切りとしている。

  • スペースハリアー

 昔のゲームと言えば2Dという平面でさまざまな工夫を凝らしながら疑似的に3Dを表現していたタイトルも少なくない。それが本物の3Dで見えるということにゲームファンの心はくすぐられた。また、この取り組みについてはCEDEC AWARDS2014にてエンジニアリング部門優秀賞や、国際3D先進映像協会のグッドプラクティス・アワード 2014を受賞。デジタルコンテンツEXPO 2014にて「3次元空間の知覚的歪みとコンテンツの再構築」と題したシンポジウムに登壇するなど、ゲーム業界内外からも注目を集めた。

 セガ3D復刻アーカイブスは、セガ3D復刻プロジェクトのメモリアルパッケージとして発売されるもの。スペースハリアー、ファンタジーゾーン オパオパブラザーズ、アウトラン、ベア・ナックル 怒りの鉄拳、エコー・ザ・ドルフィン、ザ・スーパー忍IIを収録。すでに配信されているものと同一だが、スペースハリアーは立体視の見え方に再構築をかけたものとなっている。またおまけとして、幻の3Dゲームといわれていたマスターシステム(日本ではセガ・マークIII)用ソフト「スペースハリアー3D」と「アウトラン3D」も収録している。

 セガ3D復刻プロジェクトのキーマンであるセガの奥成洋輔プロデューサーならびに、開発を手がけたエムツーの堀井直樹社長に、本シリーズの経緯やセガ3D復刻アーカイブスについてなど、さまざまなことを聞いた。

セガ 第三CS研究開発部 プロデュースセクション プロデューサーの奥成洋輔氏(左)と、エムツー代表取締役社長の堀井直樹氏(右)
セガ 第三CS研究開発部 プロデュースセクション プロデューサーの奥成洋輔氏(左)と、エムツー 代表取締役社長の堀井直樹氏(右)

オリジナルゲームとは違う復刻ゲーム制作の難しさは“完成を区切れない”

--奥成さんは昔のゲームの移植などを主に手がけられていますが、どのような経緯でそうなったのでしょうか。

奥成氏:2000年代前半のころ、セガの開発部署が分社化したことがあったのですが、セガワウという会社でプロデューサーを務めていたとき、その会社にはセガサターンで「ドラゴンフォース」というシミュレーションRPGを制作したスタッフが多数在籍していたんです。そのゲームにすごく思い入れがあったので復刻したいという話が上がってきまして、プロデューサーとして担当することになったのが、そもそものきっかけになるかと思います。

 短期間でやるはずだったのですが結局2年近くかかり、そのなかの流れでは分社化した開発会社はセガに再統合されたのですけど、その間に昔のゲームをPS2でリリースする「セガエイジス2500」というシリーズが展開されていました。ドラゴンフォースもそのシリーズで出すことになっていて、そのシリーズはディースリー・パブリッシャーさんとの合弁会社であるスリーディー・エイジスが手がけていたのですけども、会社が発展的解消をすることになって。シリーズはセガ自身が引き継ぐこととなり、それでドラゴンフォースだけではなくセガエイジス2500シリーズのプロデューサーとして引き受けることになってから、復刻ものを中心に手がけています。

 シリーズをリスタートするにあたっていろんな開発会社を探しているなかで、エムツーさんと出会って、セガエイジス2500でもいくつかのタイトルを手がけてもらいました。エムツーさんとセガとの関係そのものは、それ以前からもあったと聞いています。

堀井氏:「ガントレット」というアクションロールプレイングゲームを、メガドライブへ移植したことがきっかけですね。そのあとにメガドライブの「ガンスターヒーローズ」をゲームギアに移植したり、セガサターンの「サクラ大戦」をPCやドリームキャストに移植する仕事などをしていました。

奥成氏:PS2で発売された「セガラリー2006」のおまけ(初回限定版の同梱特典)となった復刻版「セガラリーチャンピオンシップ」の移植をエムツーさんが担当されていて。移植についてもいろいろできるというお話だったので、僕からもお願いをして移植を手がけていただきました。セガエイジス2500は2008年ぐらいまで続いていました。

 その間、2006年に任天堂さんからWiiが出るにあたりバーチャルコンソールのサービスを行うというお話があったんです。メガドライブやマスターシステムといったハードのゲームタイトルを移植して配信するというもので、バーチャルコンソールに向けた開発を継続的に展開していくことを考える上で、セガエイジスシリーズのこともありましたからエムツーさんにお願いするのがベストであろうと。それが現在まで続いている形です。PS3やXbox 360用の復刻タイトルもいくつか手がけましたが、数としてならWiiのバーチャルコンソールが一番多く、都合100本以上の移植を手がけました。

 セガ3D復刻プロジェクトについても、3DSでバーチャルコンソールを展開するお話を任天堂さんからいただいたときに、セガの携帯ゲーム機というとゲームギアなのでゲームギアのタイトルを移植することだけを考えていたんです。ただ、3DSと言えばハードとして立体視に対応しているのに、バーチャルコンソールだと2Dのままでしか遊べないと。それはもったいないと思って、バーチャルコンソールとは別に、3Dに対応した復刻タイトルの提案を私からしました。

--ちなみに伺いますが、Wiiのバーチャルコンソールで人気が高かったタイトルはどのようなものがありましたか。

奥成氏:Wiiは大きく分けて日本と欧州と北米に市場があるのですけど、総じて人気なのはソニックシリーズですね。今でも新作の展開を続けているタイトルでもありますから、シリーズの歴史としてみなさまが買われるようです。

 あとはその当時、その地域で高い人気だったタイトルは反響が大きいですね。その地域差は如実に出ます。マスターシステムで発売された「アレックスキッドのミラクルワールド」という、日本では知る人ぞ知るタイトルがあるのですけど、欧州では大ヒットしたんです。バーチャルコンソールでも欧州ではヒットしました。マスターシステムは主に欧州で売れていたという話は聞いていたものの、1980年代の世界事情はなかなか実感が持てないものです。でもバーチャルコンソールでは月間ベストテンに入るぐらい、ソニックと同じぐらいの人気があったので、その話に実感が持てました。

 Wiiのバーチャルコンソールを通して、世界におけるセガの人気ゲームを把握ができたことも、その後の展開への影響は大きいですね。獣王記をセガ3D復刻プロジェクトに扱うことを決めた理由のひとつに、Wiiで出した時に人気が高かったというのがあります。日本人からするとマニアックなゲームと思われるのですが、メガドライブの最初期に出たタイトルということもあって、海外では人気が高いという実績をもとにしています。

--昔のゲームの移植、復刻となるとオリジナルゲーム制作とは違った難しさがあると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

堀井氏:オリジナルのゲームを作るのであれば、もうここでいいという完成を区切れるんです。移植となるとオリジナルとなるものがあるので、区切ろうにも区切れないんです。100%完璧に同じということには絶対にならないのですけど、そこに近づけるために延々と作業を繰り返す終わりの見えないところですね。

 また私たちが手がけているような、10年や20年どころではない古いゲームですと、資料が残ってないとか、当時の開発者のなかでも細かいところの記憶が薄れているといったことは多いです。さらに現存するゲームハード、アーケードゲームの基板の劣化が進んでいて動作しないといったこともあります。それをどうにかメンテナンスして動かせるようにすることだけでも大変です。ソースコードも残っていないゲームプログラムを隅から隅まで調べて、別のハード向けに動かすというのはなかなか骨の折れる作業ですね。

--昔のゲームは遊びごたえがありますが、基本的に難易度が高いものだと思います。そのあたりの調整はされるのでしょうか。

  • ファンタジーゾーン

堀井氏:復刻するときの方針にもよるのですが、例えば昔のアーケード向けシューティングゲームの移植ですと、完全移植した上でも連射機能を搭載するだけでずいぶん簡単になって遊びやすくなります。あるいはステージを進んだところから再スタートできたりステージセレクト機能を搭載するといった細かいところを入れていくと、遊びごたえはもとのままですが、好きなステージだけを遊べたり1回のプレイ時間が短くなったりと遊びやすくなるものだと考えます。なので、遊びやすさや難易度の調整は必ずしももとのゲームそのものをいじる方法だけではないと思います。

奥成氏:エムツーさんとは2005年秋に発売された、スペースハリアーをPS2向けに移植するところから始まっています。今でもスペースハリアーを作っているのですが、10年ほど経過するなかでプレイヤーに対するアプローチがどんどん変わってきています。PS2で出したときは当時の思い出を忠実に味わわせたいという意図から、例えばコンティニューできないゲームは、移植してもコンティニューできない仕様にして、当時のプレイ体験をあえて強いる形にしてました。そのことを通じて当時の苦労を再体験してもらう狙いからです。

 今回のセガ3D復刻プロジェクトシリーズを立ち上げるにあたっては、方針についてエムツーさんとかなり話し合いました。携帯型ゲーム機で遊ぶにあたって、例えばスペースハリアーで言えば、操縦かんで遊んでいたゲームを3DSのスライドパッドで同じように遊ばせるのはある意味無理があると。どんなに調整をしても同じようには遊べないです。さらに、スペースハリアーを懐かしいと感じてくれるであろうプレイヤーの年齢が上がっています。10代や20代のときにスペースハリアーを遊んでいた人が、今に至るまでずっと遊び続けているかというとそうではないじゃないですか。スペースハリアーは1985年に出たゲームですから30年近く前のゲームを、そのまま同じように遊べるわけではないので、おそらく40代ぐらいの方が遊んでみて当時の気持ちを味わえるようなものに落としこまないといけないと。

 携帯ゲーム機という電車の中や合間に遊べるというところからも、据え置き型ゲーム機のようにテレビの前で構えて意気込みながら遊ぶのとは違う遊び方をさせなければいけないと。その遊び方のスタイルとして、完全移植とはいってもセーブをできるようにしてそこからのリトライを可能にするとか、堀井さんが話していた連射ボタンにできるようにするとかを積極的に取り入れることで、いうなれば“ズル”は許容しましょうと。とはいえ、そのズルを自分で許容できないプレイヤーの方もいるので、当時の通りに遊べるようにしておくことはポリシーとして持っています。

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