奥成氏:復刻プロジェクトを展開するなかで営業の同僚と話をしたときに、パッケージ販売の打診があったのがきっかけですね。セガは流通も自社でやっているため、販売店やお客さんとも近い立ち位置にいると思うのですけど、彼らに言わせると、ダウンロード専売のゲームはお客さんが知らないケースが多く、すべてのファンへは行き届いていないと。なのでパッケージにして提供しようという話があって、セガ3D復刻アーカイブスの企画が始まりました。
やはり3DSをネットにつなげていないお客さんはまだまだ存在します。そして、ネットにつないだ経験があったにしても、ゲーム情報をアクティブに収集していないお客さんだと、ニンテンドーeショップで配信していることに気付かず、存在を知らないままだと。これはスマホアプリで、ストアのランキング上位にいないと触れる機会がないのと一緒のことかと思います。ウェブ媒体向けにニュースリリースも出していますが、だいたい発売決定と配信日決定の告知の1、2回程度ですから、そのタイミングで気付かなかったら知らないままという問題があります。
お店でパッケージゲームを買う層の多くは、ゲームが欲しいときにお店に並んでいるパッケージを眺めて、面白そうなゲームを買うと思っています。そういうお客さんにはパッケージ版がリーチするのではと思っています。また、そういうお客さんにアピールするとしたら、これまでも何度か移植されましたし、復刻プロジェクトでの反響も大きかったスペースハリアーとファンタジーゾーンが伝わりやすいであろうと思って、パッケージもハリアーとオパオパが目立つ形になってます。この絵が店頭で目に付けば、このキャラクターのことを知ってると興味を持ってもらえるんじゃないかと。
奥成氏:杉森さんに関しては個人的なお付き合いもあり、またかつてメガドライブの専門誌にイラストを描かれていたり、ご自身のTwitterアカウントが「SUPER_32X」(かつてのセガのゲーム機の周辺機器の名称)となっているぐらい、セガのゲームに対する愛着の深い方なんです。あるときに別会社の仕事も受けられるか聞いてみたら、手が空いているときなら可能というお返事をいただいていて、パッケージ版のプロジェクトが動くと決まったときに正式な打診をメールでしてみたら、その日のうちにOKのお返事をいただきました。
堀井氏:これはとてもうれしかったですね。
奥成氏:杉森さんにお願いしたのは、3DSで一番売れているゲームのパッケージを手がけられているというのありますが、収録されているゲームは復刻であってもそのままのものではありません。なので、昔のパッケージデザインをそのまま使うよりは「新しくて懐かしい」という感覚を出して目を引きたかったのはあります。
奥成氏:セガ3D復刻プロジェクトがどういうスタイルのゲームであり、シリーズなのかを知って欲しいということと、1本のソフトとしてできるだけジャンルを分けておきたいという考えをもとに、ラインナップは決めました。3Dシューティング、2Dシューティング、ドライブ、ベルトアクション、2Dアクション、アクションアドベンチャーと、そのジャンルで見せたいゲームを優先して選びました。
個人的にはファンタジーゾーンIIがおすすめしたいところはありますが、ファンタジーゾーンがあるのにファンタジーゾーンIIだけというのも少し変かなと思いました。アフターバーナーやギャラクシーフォースも、スペースハリアーの後に開発したのでクオリティは上がっていますけれども、スペースハリアーのインパクトがやはり強いであろうと。スーパー忍IIについても、人気や知名度はソニックになるのは当然なのですが、ザ・スーパー忍IIはグラフィックや3D感についてすごく凝って作ったものです。これやベア・ナックルを目的で買うお客さんは少ないとかと思いますが、スペースハリアーやアウトラン目的で買った方が一緒に入っているからと遊んでもらって、意外と面白いと感じてもらえたらという、3D表現のお勧めとして入れています。
奥成氏:スペースハリアーが最初に出したタイトルで、そのあと2年間シリーズを続けて得られた蓄積がありますから、今度はそれをスペースハリアーに還元しようと。ほぼ作り直しで二度手間になってますが、我々開発する側もプレイヤー側も並々ならぬ思い入れがありますから、もう一度作ることができるこのチャンスに還元して、より3D感を味わってもらおうと考えたからです。
堀井氏:プレイした方々の感想をたくさん聞いてますし、セガ3D復刻プロジェクトの最初に作ったタイトルなので、3DS向けの開発に突き詰める余地はまだ残されていたというのもあります。スペースハリアー以降に立体視対応のゲームを作っていくなかでも、スペースハリアーをベースに、実験や検証を重ねたというところありました。なので、もう一度ソフトを出す機会があったので、そこに飛びついたということです。
堀井氏:今までは書割を空間に配置していたのですが、今回は1枚絵をバラバラにしてから何枚も重ねていく形でひとつの物を表現しています。言葉では説明するなら「艶が出ている」というんでしょうか。ボーナスステージに出るユーライアというドラゴンには柔らかさも表現されたり、木もより茂っているように見えるかと思います。
奥成氏:実際にソフトでは「なめらか3D」というオプションがあって、オフですと配信版と同じ立体視の見え方になります。それぞれは1枚の絵なので、その絵が書割の看板のように立体的な位置に配置されています。例えばタイトル画面でロボットやマンモスがいますけど、それぞれ1枚の絵として表示されます。オンにすると、ロボットの前足が前に出ているとか、マンモスの鼻が飛び出して見えます。あとは木にもボリュームを持たせて真ん中の部分が膨らんでいるとかですね。
堀井氏:パッと見て驚くようなものではないかと思いますが、あるとないとでは全体の印象がずいぶん変わってくるものなんです。なのでやれてよかったです。ただ、セガ3D復刻プロジェクトでやっていたことはまるで無駄ではなかったです。あれはあれでいいところまでいっていました。立体視の見え方として95点から98点に、さらに磨きがかけられたということです。ちょっとではあるのですけど、それがずいぶん大きい。また突き詰めたという感じがします。
奥成氏:スペースハリアーは、マスターシステムのころから移植のチャレンジを行っているタイトルで、我々としてもPS2、Wii、3DSと3回のチャレンジをして突き詰めていってますが、これが4回目のチャレンジでさらに突き詰めたと思います。仮にエムツーさんがほかの仕事で10年間の知識を得たとしても、ここまでのスペースハリアーは作れなかったです。10年間のスペースハリアーを作ってきたからこそできた、3Dのスペースハリアーであるといえます。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する