昔感じた衝撃を立体視で再現--セガ3D復刻プロジェクト・アーカイブスのキーマンに聞く - (page 4)

マスターシステム時代の3Dゲームをおまけにした理由

--おまけとしてマスターシステム時代の3Dゲームである、スペースハリアー3Dとアウトラン3Dも入っています。

奥成氏:まずパッケージ化に際して、営業から特典となるおまけソフトを付けてほしいという要望は一切ありませんでした。それでこのパッケージを購入されるお客さんを想像するに、店頭で見かけて初めて知って買われる方、シリーズを知ってて1、2本程度購入されていて、パッケージ版を機に買おうという方がメインだと思います。その一方で、Twitterなどでパッケージ版の要望を出していた方もいて、その方々はおそらくコレクションとして持つことに安心できる方だと推察していますし、そういう方はこのシリーズを全部買っている方であるかと思います。

 収録されている6本を持っているのにもかかわらず、パッケージ版でも買い直すぐらいの方に、パッケージであることのメリット以外のプレゼントをしたいと。わざわざ二度買いするぐらいの方に喜んでもらえるものをいろいろ考えたなかで、エムツーさんから提案いただいたのが、30年ぐらい前のマスターシステム用3Dゲームであるスペースハリアー3Dとアウトラン3Dを収録することでした。

  • アウトラン3D

 この2つのゲームを遊びたいという方はすごく限られています。メニューにしても「おまけ」と区切って、ほかのタイトルとは同列で扱っていません。でも、このシリーズを全部買ってくださって一緒に楽しんでくれるような方には、こういうゲームがあったことを知っていたり、当時遊んでみたいと思ったけど遊べなかったりと思い入れはあると。そういう方々に向けたサプライズとして用意しました。

堀井氏:渋めどころか、マニアックすぎる選択だと思います。

奥成氏:こう言ってしまうのも変なのですが、セガ3D復刻プロジェクトのタイトルを買っていただいた普通のお客さんが、改めて買い直す必要はないと思っています。収録されているソフトは同じものですし、スペースハリアーの見え方が違うというお話はしましたが、配信版もスペースハリアーであることには変わりはありませんから。すでに持ってるからいらないという選択は当然なのですが、それでいてもパッケージ版を求める方には喜んでもらえると思います。

 ここにシリーズの新作が1本入っているとなると、その6本を買ったお客さんはいい気持ちにならないでしょう。なぜそのソフトは単発で配信しないのかという意見が出ますし、僕もそう思います。一方で、この2本というのは単発の商品化するのはかなり厳しいと言えるぐらいマニアックなものですから。そういうものを提供するチャンスだったというのもあります。特にこのアウトラン3Dは海外で発売されたのですが、日本ではタイトル発表をしたにもかかわらず発売されなかったゲームなんです。

堀井氏:メガドライブが出た後も雑誌の発売日リストにも載っていて、いつの間にかひっそりと消えていたタイトルです。これはいつ出るんだと言われ続けて、30年近く経過しました。

奥成氏:なぜ日本で発売されなかったかというと、ユーザーがメガドライブに急速に移行して、PCエンジンも発売されてスーパーファミコンも出ることが決まっているというご時世で盛り上がっているときに、セガ・マークIIIのゲームが急速に売れなくなって、3Dグラスという周辺機器を付けないと楽しめないゲームソフトを発売する理由がなくなってしまったからと推察しています。そして海外のマスターシステムのソフトは、日本のセガ・マークIIIの本体では、そのままでは動かない仕様でしたから、幻のゲームなんです。

 そして、このことを知っていないと幻のゲームと感じてくれないですし、そもそもスペースハリアーもアウトランもオリジナルであるアーケード版の復刻版が収録されていますから。普通の人から見たらどっちも同じと感じます。そういうニュアンスのおまけです。

--堀井さんとしてこの2タイトルを提案した理由はあるのでしょうか。

  • スペースハリアー3D

堀井氏:最初は、マスターシステムの3Dグラスに対応したタイトルを可能な限り収録する方向で考えていました。ただ、3Dグラスと3DSの立体視の仕組みが違っていたり、目に対して与える影響について、その基準が昔と今では違っています。それらを検証して、作業量も踏まえて収録可能と判断した結果がこの2本だったというところです。アウトラン3Dは幻のゲームでしたから外したくなかったですし、スペースハリアー3Dは復刻版との比較対象になりえると。ほかにも数本ほど着手はしていたものの、発売時期と作業量の兼ね合いから断念したのが正直なところです。

奥成氏:マスターシステムの仕組みとゲームギアの仕組みはほぼ同じといっていいぐらい親和性の高いハードです。ゲームギアの3DS向けバーチャルコンソールをエムツーさんが担当されてきたので、3DSでマスターシステムタイトルの開発というのは、0からのスタートではなく進められるというのも前提としてありました。それでも3Dゲームの移植は大変でしたね。

--マスターシステムの3Dゲーム特有の復刻の難しさというのはあったのでしょうか。

堀井氏:本当に大変でした、というよりも大変だったようです。提案したのは僕ですが、その大変さはプログラマーに降りかかってしまったので、本当にごめんなさいとこの場を借りて伝えたいです。というぐらいに苦労していましたので。

 これはあくまで一端なのですが、当時のゲームは絵を右目用と左目用を交互に表示させて立体視を表現していたのです。60フレームで1秒間に60コマあるうちの30コマずつを右目用と左目用に割り当てていたんです。でも、偶数フレームと奇数フレームのどちらを右目と左目に割り当てているかがゲームによってまちまちで。しかもゲームのなかでも、プログラマーがどこをどう担当したかによって違っていて、入れ替わっているところもあったんです。そこを見極めながら解析を行って、しかも表示方式が違う3DSに持っていくのですごく手間がかかりました。というよりも、手間がかかって苦戦している様子を見て「僕はなんて提案をしてしまったのだろう……」と悔い改めました。でも、次の機会があったらまたやります(笑)。そういうことの積み重ねで2本ができました。

--最後に、この先も復刻タイトルの制作を続けていかれると思いますが、どのように取り組んでいこうと考えていますか。

奥成氏:どんなゲームも時代がたてばレトロゲームになります。それを考えるとセガという会社がゲームを作り続ける限りは、題材に困ることはないでしょう。そしてその時代時代で、お客さんが興味を持つようなアプローチを、手を変え品を変えというぐらいにやっていかないと興味を持ってもらえないというのは、この10年でずっと感じています。今はこの3Dがいいと思ってやっていますが、その次にある魅力あるアプローチとはどういうものなのかを考えながら続けていきたいです。

堀井氏:ネタには事欠かないという点では同じです。ゲームのビジネススタイルもパッケージ販売が少なくなって、遊び方でもスマホで遊ぶことも多くなりました。今後のゲームがどのような遊ばれ方をしていくのかを考えつつ、その変化にあわせて、どのようにゲームを再構成していくのかを考え抜いた上で、「こういうのならどう?」とユーザーの方に提示できるものを作り続けていきます。

(C)SEGA
Bare Knuckle: MUSIC (C)YUZO KOSHIRO
Ecco the Dolphin was originally created by Ed Annunziata.

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