しかし、多くのユーザーはPCとモバイルの両方を状況に応じて使い分けている。そこでSpotifyが進めるのが、シームレスにさまざまなデバイスを利用できるという意味でのプラットフォームを超えた(クロスプラットフォーム)体験だ。
ここでの取り組みが2013年秋に発表した「Spotify Connect」だ。スマートフォンアプリを利用して、無線経由でスピーカー、ノートPC、TVなどでSpotifyを楽しめる機能だ。WiFi対応スピーカーなどネット接続に対応した家電が増えており、キッチン、野外、車内と状況に合わせて音楽を聴ける環境が整いつつある。「ユーザーは自分のお気に入りの音楽があり、これをさまざまな端末プラットフォームで楽しみたいと思っている。われわれはこれを実現する」とEspinel氏は狙いを説明する。
外出時にスマートフォンで聴いていた音楽を、自宅に帰ると対応スピーカーに切り替え、途切れることなく楽しめる。電話の着信やメッセージなど電話機能はそのまま利用できる。クラウドから直接ストリームされるので、音質はスマートフォンの処理能力に依存せず高品質を保てるという。
ここではソニー、Samsung、Bang&Olufsen、Bose、パイオニアなどのハードウェア企業と提携しており、今後もパートナーを増やす計画だ。キーワードは「モーメント(瞬間)」。さまざまな方法で楽しめるようにすることで、ユーザーの生活の中に音楽がある“モーメント”を増やす。それにより最終的にはSpotifyの利用が増えると考えている。
平行して進めているのが、「ブラウズ」と「発見」の2つの体験だ。Espinel氏は前者を「lean in(内向き)」と「lean out(外向き)」と表現する。「ブラウズ」では2013年春に買収したTunigoの技術を活用する。Tunigoはプレイリスト発見アプリで、キュレーションのノウハウをもたらした。専門スタッフが、お休み前、パーティ、アコースティックの朝、などさまざまなプレイリストを用意しており、「気分に合わせて音楽を聴くことを実現する“プログラミング”体験の土台になっている」(Espinel氏)という。「発見」は、ユーザーが視聴する音楽データをベースに、おすすめの音楽をレコメンドしたりパーソナライズできる機能だ。
「ブラウズ」と「発見」の両方の土台となるのがデータだ。よりよいプレイリストをレコメンドするにあたって、SpotifyはThe Echo Nestを買収した。Echo Nestは音楽データ・ディスカバリー技術のベンチャー企業で、「コンシューマーがどのように音楽を消費しているのかなど、音楽を理解するという点では最高レベルの技術を持つ」とEspinel氏。どのようなユーザーがどのような音楽を楽しんでいるのかについて深い洞察が得られ、レコメンドの精度を向上できるという。
データの活用は音楽分野でも注目されており、Spotifyは今後も投資を続けていくという。背景には、PandoraやDeezerなどとの競争だけでなく、デジタル音楽サービスに対するユーザーのシフトがあるようだ。楽曲カタログが2000万曲を揃えた後、「ユーザーは音楽へのアクセスという点では満足しており、次は真の価値を得たいと思っている」とEspinel氏は説明した。
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