それでは、香港の人々は皆「ガツガツ系」なのかといえば、決してそういうわけではありません。家族を大事にしてゆっくり働くタイプ、収入よりも自由時間を重視して働くタイプの人も多くいます。
独立願望はなく、安定して同じ会社で働きたいという人ももちろんいますし、それが会社側のニーズと合致すれば、同じ会社で働き続けることも可能です。ポイントは、自身で選択した結果は自己責任であるということです。
初めて香港に来た時に驚いたことの1つは、路上でゴミ運びや清掃をしている人の中に、80歳くらいのおばあちゃんがいたこと。そのおばあちゃんは、貧しくて老後の貯蓄ができなかったのかもしれませんし、ギャンブルですってしまったのかもしれません。どちらにせよ、そうなってしまったら、香港で生きていくために“できる仕事”をするよりほかありません。
香港では実際に、日銭を稼いで生きている人たちもたくさんいます。自由に仕事と労働が取引されている香港のマーケットだからこそ、そこで何億も稼ぐようになる人とそうでない人の格差は非常に大きくなっています。
しかし香港の人々は、それを政府のせいにしたり、会社のせいにしたり、生活保護を要求したりすることはほとんどありません。中国本土や海外の人も多く、あらゆるバックグラウンドを持つ人がいます。その中で、それぞれの方法で筋を通して働いている、それが香港なのです。
したがって、香港の人々にとっては、個々の多様性を守り、民主的に発展することは、誇りであり重要なことなのです。特に中国的教育を受けていない今の香港の若者世代は、一代で財を築いた親世代や世界に出て行く先輩世代を見て、香港人としてのアイデンティティを強く持っています。
いま香港で起きているデモは、それを奪おうとする中国政府のやり方に抗議をしているのだと言えるのではないでしょうか。
筆者自身はデモに参加はしていませんが、現場では香港の将来を真剣に考える人たちが集まって活動をしている印象を持っています。単なる個人的な不満や、好き嫌いの感情によるデモではなく、ただまっとうな普通選挙を求めて、私生活の合間を縫って座り込みに参加しているのです。
経済への影響や中国との関係悪化は懸念されますが、今回の歴史的な行動が、香港の将来に繋がることを願ってやみません。
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