この連載では、アウンコンサルティングの駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを週替わりでお届けします。
長らく終身雇用制が主流だった日本でも、最近はさまざまな「働き方」が注目されています。昨今、香港はデモ騒動で世界から注目を浴びています。今回はそんな香港人のあり方を垣間見られるコラムにしたく、香港人の“働き方”をテーマにしてみます。
時期をそろえて新卒採用を行い、社員をじっくり会社で育てて長く働いてもらうという日本の雇用環境。新卒で入社し、その会社で評価されて昇進していくというのが一般的なキャリア形成です。それに対し、香港の雇用環境は大きな違いが3つあります。
香港では、時期をそろえた新卒採用はなく、学生は卒業前後に各自のタイミングで就職活動を行います。企業は、主要な大学に自社のアピールをしに行くことはありますが、基本的に人員が必要になったときに求人を行い、新卒も中途も区別なく面接し採用します。
中には採用のポジションによって職務経験が必要なものもありますが、新卒でも在学中のインターンで経験があれば採用されることもあります。また、複数年の経験があっても、実力が評価されなければ採用されません。
ポテンシャル採用ではなく、即戦力採用……でも実はもう1つ、メジャーな仕事の見つけ方があります。それは、“コネ”採用。
「今仕事を探しているのだけど、経理の仕事ないかな」 「それなら、友達の叔父さんがこないだ探していたよ。連絡先教えてあげる」。東京の半分の広さである香港では、こんなことが日常茶飯事で起こります。香港では、日頃から自分のできることややりたいことを発信し、周囲と関係を築いておくことが非常に重要です。
同様に、この様なことも頻繁に起こります。
「ねぇ、共通の知人から君のこと聞いたのだけど、うちの会社に来ない? 今より少し良い給料で、倍のコミッションを出すよ」よほど大手の金融機関や不動産会社などに入ってマネジャーにでもならない限り、香港の企業ではただ長く働いても給料は上がりません。同じ会社に何年もいるのは、転職する実力がなく、ヘッドハンティングもされないとみなされてしまいます。
大手の金融機関でも、昇進したタイミングで更なるキャリアアップを目指して、より良い給料の同業他社に転職する人もいます。もちろん、企業も成果を出している従業員に残ってもらう工夫をするので、双方の合意で長く勤める人もいますが、香港において、勤続年数が長いことは必ずしも良いこととは限らないのです。
香港の人々は、自分の強みとコネクションを活かしてキャリアアップするだけではなく、多くの人は副業や自分のビジネスを持っています。
筆者の周りにも、本業はリクルーターながら、趣味の写真を活かして終業後や週末にイベントにおける写真撮影の仕事を行っている友人や、本業の経営コンサルティング知識を活かして教育機関の講師を兼任している知人などが多くいます。
日本では副業禁止の企業が多いため驚かれるかもしれませんが、香港では「誰かに雇われている」ことよりも、「自分のビジネスを持っている」ことの方がステータスが高く、実力のある人ほどいくつもの収入源を持っています。
香港人にとって、会社に勤めるというのは、数ある働き方のうちの1つにすぎないということです。
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