この連載では、アウンコンサルティングの駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを週替わりでお届けします。今回は東京本社から、今の日本の“自国を称賛する”風潮についての考察をお伝えします。
筆者だけが感じていることではないかと思いますが、ここ最近「他国の人々から見た、日本の良いところ」を取り上げるテレビ番組が増えてきているように感じます。
仕事上、海外進出やインバウンド集客の支援を頻繁に行っているため、ウェブの世界でも同様に日本を称賛するコンテンツや紹介動画が増えてきていると実感しています。実際に、最近は日本の商品や不動産を海外で販売したいとの相談を多く受けるようになってきました。
日本は他国からどのように見られているのか、気になる日本人が増えている傾向にあることが、Googleトレンドの検索数推移から見えてきました。以下の図は、日本の検索エンジンにて、ある特定のキーワードがどのくらい検索されているのかを表しています。
この図を見ると、検索キーワード「日本 海外反応」の検索数が、2013年9月に突出しているのがわかります。この時は東京オリンピックの選考時となっているので、納得できる理由です。その他の検索数が突出している箇所も、日本に関する世界的なニュースがあったものと考えられます。しかし、図の全体を通して見ると、特記すべき時事ネタが無くとも、年々検索数が上がっていることがわかります。
なお、現時点での想定月間検索数は以下の通り。Google AdWords キーワード プランナーによる「完全一致」の結果(8月22日取得)です。
東京オリンピックの開催決定や、富士山の世界文化遺産登録といった世界的なニュースもあり、最近の日本は他国からの評価をより気にする傾向にあることが考えられます。また、最近のテレビ番組やウェブコンテンツから、現在の日本は自国を称賛する傾向にあると見受けられます。それに比べ、海外では、自国の評価に関するキーワードはほとんど検索されていません。
他国の人々の話を伺っていると、彼らのほとんどは国を跨ぐことに何の躊躇もありません。多くの国は陸続きであるせいか、国境の意識は薄く、手続きの一つとして見ている人も多いでしょう。彼らは愛国心が無い訳ではなく、個人としてのアイデンティティの方が強く、自国への帰属意識が低いと感じます。
一方、日本の場合は島国なので、国との境目を意識せざるを得ないのか、国内と海外の違いに非常に敏感です。また、越境のハードルや日本への帰属意識が、他国よりも高いと伺えます。それらを加味すると、日本は「他国からどのように評価されているのか」という意識が、潜在的に強くあると予測できます。
また、日本ではあまり人を褒める文化がありません。これは、個人への称賛に関しては謙虚さが美徳とされ、公に評価されることが苦手であるがゆえではないかと考えられます。しかし、自国が褒められているのであれば謙虚になる必要もなく、褒められて心地の良いレベルなのではないでしょうか。
しかし、今の日本の“自国を称賛する”風潮は、やや強引な部分もあるように思えます。冒頭に上げた「他国の人々から見た、日本の良いところ」を取り上げるコンテンツなどは、すでに日本に訪れたことのある外国人や日本贔屓の外国人に、日本の良いところを聞いているとも考えられます。それでは、あらかじめ褒められることを想定して良い所を聞いているに過ぎません。また、調査をしている人間が日本人であれば、聞かれている方もあまり悪いことは言えないでしょう。今の風潮に流されず、広い視野を持つことも重要だと考えます。
今後は日本国内の人口減少や東京オリンピックなどで、諸外国の連携や、外国人を迎え入れる機会が多くなります。そのような状況の中では、より客観的に日本の良い所も悪い所も見直して、日本国内に伝える必要があるのではないでしょうか。
自国の良い所をアピールする気運や、「おもてなし」の心が海外の方に通じ、良い方向に進むことを期待しています。
2007年12月アウンコンサルティング入社。
検索エンジンマーケティング(SEM)事業で、コンサルタント、営業を経験。金融、美容業界などBtoCを中心に幅広い業界の導入支援実績を持つ。
現在はエキスパートマネージャーとしてグループを統括し、グローバルマーケティング戦略の立案・実行に携わる。
最近の趣味はジョギング。平日は忙しく運動不足になりがちなので、週末は決まって、近所である多摩川沿いを走っている。
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