モバイル決済、つまり商品やサービスの代金を店舗のレジでスマートフォンを使って支払うという概念が、Appleと「iPhone 6」が関わることで、ようやく主流になるかもしれない。
Appleが将来の製品展開について語ることはないが、次期iPhoneに近距離無線通信(NFC)という短距離での無線技術を利用したモバイル決済機能が搭載されるとの予測は、最近ではWiredが報じている。Appleが米国時間9月9日に開催するイベントでは、次期iPhone(場合によっては複数のモデル)が発表されるという見方が有力だ。
Appleがモバイル決済を導入することで、ドラッグストアやスーパーマーケット、タクシーでの支払い方法が大きな転換点を迎えることになるだろう。モバイルデバイスのタップによって決済する技術や機能は何年も前から存在する(NFC対応のサムスンの「GALAXY S5」やNFC対応のクレジットカードを、多数のWalgreenドラッグストアにあるPOS端末にタップすることができる)が、米国ではまだその認知度は低く、利用者は少ない。Appleの知名度と膨大なユーザー層(同社は既に「iTunes」アカウント所有者約8億人のクレジットカードデータを保有している)によって、その流れが変わる可能性がある。
Recon AnalyticsのコンサルタントRoger Entner氏は次のように述べた。「Appleは再び、ビジネスの世界を変革し、破壊再生する機会を手にした。Appleが本気で決済市場に乗り出してくるとしたら、その影響は計り知れない」
Appleの広報担当者はコメントを控えた。
Appleは、モバイル決済分野に最初に参入する企業にはならないだろう。Googleは2011年5月に「Google Wallet」サービスを導入しており、携帯電話事業者はモバイル決済のプラットフォームを構築する目的でジョイントベンチャーを創設している。VisaやPayPalなど既存の金融企業も、決済とスマートフォンの融合を試みてきた。
Appleは、自社で問題を片付けられるようになるまで、新しい技術から距離を置こうとする傾向がある。高速LTE無線ネットワークを利用できるiPhoneの登場も、他の一部のスマートフォンより2年遅かった。NFCは、少なくとも直近の2世代のiPhoneで採用のうわさがあったが、iPhone 6でようやく実現するかもしれない。この技術はレジでの決済処理を可能にする上での要となるだろう。
スマートフォンを本当の意味でのデジタルウォレット(レジでの支払いに使える機能もその1つ)に変えるというアイデアは、何年も前から話題を集めていた。だが今までのところ、有望視されながらも、少なくとも米国ではあまり結果は出せていない。
モバイルデバイスを現金や小切手、クレジットカードの代わりとして使うには、以前から技術的なハードルが多かった。機能させるためには、NFC技術をスマートフォンとPOS端末の両方に組み込む必要があり、NFCチップを搭載した機器の普及は遅れている。NFCは主に、GALAXY S5や「Nexus 5」のようなハイエンドスマートフォンの機能と位置付けられてきた。
また、店舗側と消費者側の両方に、NFC技術の仕組みや、レジでスマートフォンをタップする方がクレジットカードを機械に通すよりも速く、確実で、簡単である理由について混乱がある。
「ユーザーの側で導入が進まないことと、小売業者の側で導入が進まないことは、ニワトリが先か卵が先かという問題だ」。Jackdaw ResearchのアナリストであるJan Dawson氏はこのように述べる。
これが、Googleのような有力企業でさえ苦戦している理由の1つだ。3年以上前に、デジタルウォレットと決済サービスを大々的に発表したにもかかわらず、Googleのモバイルウォレットはメインストリームに受け入れられていない(その認知度すら低い)。同社はGoogle Walletの利用者数を公表していないが、「Google Play」ストアのページを見ると、レビュー数は4万7000件を超えており、4つ星の平均評価が付いている。Googleは利用者数についてのコメントを拒否した。
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