一方、米国の携帯電話事業者大手4社のうち、Verizon Wireless、AT&T、T-Mobileの3社は、NFCによる同様のモバイル決済サービスを提供するためのジョイントベンチャーを創設した。「Isis」と命名されたこのサービスは、1年間の試行期間を経て2013年11月に米国全土で展開され、CokeやJamba Juiceといった著名なパートナー企業が協賛し、早期導入者に景品が提供された。だが2014年7月には、Isisは改名を迫られることになる。テロリスト組織イラク・シリア・イスラム国(Islamic State of Iraq and Syria)の略称ISISと非常によく似たサービス名だったからだ(編集部注:「Isis Wallet」は米国時間9月3日、「Softcard」と改名されることが発表された)。
オンライン決済サービスのPayPalは、NFCによる取引に対応しているが、商品の受け取り前に電話で注文と支払いができるなど、他の機能も追加している。
Appleは、モバイル決済サービスのための土台を、「Passbook」でひそかに準備していた。Passbookは2年前に同社の「iOS」ソフトウェアに導入され、「iPhone 5」の機能としてリリースされたアプリだ。これまで、航空券や会員カード、クレジットカード明細書などの保存場所として利用されてきた。当初、Passbookの対応アプリはごくわずかだったが、現在はDelta、Starbucks、Fandango、The Home Depotなどとも連動するようになっている。しかし、Passbookはさらに強力なアプリになる可能性がある。
「Appleは、Passbookで既に大きな一歩を踏み出しており、米国でモバイル決済の市場を大きく切りひらく可能性を秘めている」。Lopez ResearchのアナリストであるMaribel Lopez氏はこのように語る。
Lopez氏によれば、Appleはサービスの開始からわずか数カ月でモバイル決済取引のシェアの5分の1を占める可能性があるという。同氏の試算は、iPhoneユーザーの半数がこの機能を試し、iPhoneの米国スマートフォン市場におけるシェアが35%という前提に基づいている。
またAppleは、iTunesサービスを通じてほぼすべての自社ユーザーのクレジットカード情報やデビットカード情報を保有しているため、ユーザーに新しいサービスへの登録を依頼するという余分なステップを踏む必要もない。これにより、導入における最大の障壁の1つを取り除くことができる。
iPhoneによるモバイル決済というパズルの最後のピースは、2013年の「iPhone 5s」で追加された指紋認証センサだ。指紋認証センサが次期iPhoneにも搭載されることはほぼ間違いない。2012年にAppleがAuthentecの買収で獲得したこの指紋センサは、オンラインショッピングだけでなく、Best Buyのような大型小売店における高額取引でも、簡単かつ安全に購入者を証明する手段となり得る。今でも、指紋認証センサを使ってAppleの「iTunes Store」「App Store」「iBooks Store」から手軽にコンテンツを購入できる。
Appleにとってのさらなるメリットは、単純な取引に付加できる可能性のあるサービスや機能だ。ただし、そのためには、これまで何年もくすぶっていた決済手段の認知度を高めなければならない。Googleはかつて、モバイル決済こそがターゲット型の広告やサービスの最適な場所と考えていた。
最終的に重要になるのは、こうしたサービスや機能だ。結局のところ、クレジットカードを機械に通す代わりになるというだけでは、たいした違いにはならない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス