8月、シリアでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に米ジャーナリストが処刑される映像が同組織の公式メディアセンターによってYouTubeで公開され、数分の間にTwitterを通じ世界をかけめぐった。その前には、シリアで戦っているオーストラリアのイスラム国戦闘員が切断したシリア軍兵士の首を持った7歳の息子の写真をTwitterで流し、やはり世界的に物議を醸した。
「Eジハード」「サイバージハード」といった言葉が誕生しているように、インターネットやソーシャルメディアはイスラム過激派グループによっても利用されている。ネット上のテロ活動の9割がソーシャルメディアによるものだという専門家もいる。
2013年のナイロビのショッピングモール襲撃事件では、ソマリアの犯行グループが、#Westgateというハッシュタグを使ってTwitterで実況中継を行った。YouTubeでは爆弾の作り方やハッキングの仕方などの映像が掲載されているが、日本人も人質となった2013年のアルジェリア人質事件でも、犯行声明はYouTubeで行われた。
FacebookやTwitterでは、イスラム国戦闘員や賛同者により、シリアの戦地の状況が写真や動画とともにリアルタイムで送信される。先週は、多数のシリア軍兵士殺害の様子がYouTubeで流された。
ソーシャルメディアは、犯行声明やプロパガンダの配信だけではなく、戦闘員のリクルート、思想教育、指導・訓練などにも利用されている。今や、ネット上でバーチャルキャンプの訓練が可能であり、世界中から若者を安価にリクルートできるのである。
特に戦闘員のリクルート対象は若い層であり、若者に呼びかけるにはソーシャルメディアは格好のツールだ。ソーシャルメディアでは、ユーザーのプロフィールを読み、リクルート対象として適切か、どうアプローチすべきかを練ることもできる。たまにジハード関連のサイトをのぞくだけのような主流社会に属する若者を、もっと過激なサイトへと誘導するのである。こうして、これまでテロとは何の関わりもなかった若者らが、オンラインでリクルートされ、戦地や自爆テロへと導かれる。
とくにTwitterの普及により、情報戦線が変わり始めた。先の米ジャーナリストを処刑したのはイギリス人だ。8月下旬、初のイスラム国米国人戦闘員の死者が出たが、2013年12月時点で74カ国から1万人以上が戦闘員として戦うためにシリアに渡航したといわれる。彼らの多くが過激派グループの正式チャネルではなく、過激派らの思想に賛同する拡散者を通じ、ソーシャルメディアで情報を入手しているという。
拡散者の多くはアラビア語以外も流暢で、正式チャネルのアラビア語の情報を英語や他の言語に訳して世界中に拡散する。一方通行になりがちな正式チャネルとは違い、拡散者らはフォロワーらと交流するので、さらに人気が増す。彼らはオンライン活動家ともいえるのだが、過激派グループのメンバーではないので、彼らが流す情報はグループも直接影響を与えられないということである。
ソーシャルメディア運営側は、「死人の映像や残虐なコンテンツ禁止」などを理由に、こうしたコンテンツを流すアカウントを削除しているが、簡単に別のアカウントを開設できるので、いたちごっこに終わっている。米ジャーナリストの処刑映像がYouTubeに投稿された際、YouTube側は30分以内に削除したのだが、別のユーザーによって再投稿され、さらに30分ほど流れ続けた。その間、Twitterではリツイートが続いていた。
過激ソーシャルメディア世代を相手に情報を統制・検閲するよりも、彼らが流す情報を利用し、ソーシャルメディアを通じて情報操作する方が有効なのではないだろうか。
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