Appleが9月に、現行の4インチデザインより大きなスクリーンを搭載する新型iPhoneを少なくとも1機種発表することは、ほぼ間違いないだろう。iPhone 6には4.7インチのディスプレイが搭載される可能性が高いと考えられている。それよりも不確かなのは、さらにもう1機種、スマートフォンとタブレットの中間に位置する大型デバイスが発表されるかどうかということだ。こうした「ファブレット」には5.5インチのスクリーンが搭載されるとみられているが、最新の報道によると、2015年まで発売されない可能性もあるという。
2012年後半に発売された「iPhone 5」以降のここ2世代のiPhoneは、4インチのディスプレイを搭載している。そのサイズへの移行は、初代iPhoneの発売以来ずっと採用されてきた3.5インチスクリーンからの大きな変化だった。Appleは当初、タッチスクリーンを片手で操作できるように設計していた。これが、Cook氏(と前CEOのSteve Jobs氏)がディスプレイの大型化に反対してきた理由の1つだ。
しかし、サムスンの「GALAXY」デバイスやGoogleの「Nexus 5」の好調な売れ行きが示すように、消費者がより大きなスクリーンを求めていることは否定できない。Appleはそれを理解している。Apple幹部陣は、2013年4月の社内プレゼンテーション資料(2014年春に行われた直近のApple対サムスンの特許訴訟で提出された証拠の一部)に、「消費者は、われわれが持っていないものを欲しがっている」と記している。そのプレゼンテーション資料には、スマートフォン市場の成長が鈍化しており、多くの消費者はより安価で、より大型のスクリーンを搭載するスマートフォンを求めるようになった、との記述もあった(Appleのマーケティング責任者であるPhil Schiller氏は証言台でその文書について質問され、あまり重要な文書ではないと主張した)。
大型iPhoneの発売はモバイル業界に大きな影響を及ぼすだろう。スマートフォンのデザインやOSが標準化された市場において、大型スクリーンは、AndroidデバイスがiPhoneと差別化を図る1つの方法だった。Appleがより大型のデバイスを手に入れたら、サムスンやLGといったAndroidデバイスメーカーにとっての利点は少なくなるだろう。
JackDaw ResearchのアナリストであるJan Dawson氏は、次のように述べている。「iPhoneには自分が使いたいスクリーンサイズのオプションがないという理由だけで、今はAndroidデバイスを使っているという人もいる。4.7インチサイズのiPhoneが登場すれば、Androidから多くのユーザーを取り戻すことができるだろう。その多くはサムスン製デバイスのユーザーになるはずだ」
スマートフォン分野におけるAppleの最大の競合であるサムスンは、ファブレット分野の先駆者であり、ファブレットの人気を利用して、より多くのユーザーを魅了してきた。サムスンはAppleとの特許侵害訴訟の中で、自社のデバイスが購入される主な理由の1つは他社製品より大きなスクリーンを搭載していることだと主張した。それが差別化要因でなくなったら、サムスンのデバイス販売台数は打撃を受けるかもしれない。
最近では、Appleはコストの上昇を相殺するために大型スクリーン搭載iPhoneの開始価格を値上げするのではないか、との憶測も流れている。米国でiPhone 5sを2年契約付きで購入した場合の開始価格は199ドルだ。販売奨励金が適用されないiPhone 5sの開始価格は649ドルである。一部のアナリストは、iPhone 6の価格がそれより100ドル高くなる可能性もあるとみている。
Appleは小さなスクリーンを好む消費者を満足させるため、新しい4インチのiPhoneも発表するのか、という疑問もある。iPhone 5cシリーズがどうなるのかも不明だ。Appleは1年前、初めて2種類の新型iPhoneを発表した。ハイエンドのiPhone 5sと、比較的安価でカラーバリエーションが豊富なiPhone 5cだ。しかし、2年契約付きの開始価格が99ドルのiPhone 5cは、少なくとも発売当初はあまり売れなかった。Cook氏も1月の決算発表の場でそのことを認めている。
大型スクリーン搭載iPhoneを片手で操作できるかどうかを心配するユーザーもいる。最近流出した画像から判断すると、Appleはスクリーンサイズを4.7インチに拡大するが、手で持ちやすいサイズを維持するために、ディスプレイの下のホームボタン周辺の面積を縮小するか、スクリーン側面のベゼルを小さくするつもりなのかもしれない。
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