Microsoftの「Internet Explorer」(IE)は、動作が遅く、最新の標準をサポートしていない古いブラウザという悪評に苦しんでいたが、同社は2009年、IEの巻き返しを図るキャンペーンに乗り出した。最近のIEは多くの標準をサポートするようになり、パフォーマンスも向上して、古いバージョンを使用するユーザーも少なくなってきた。何より、Microsoftは再び、ウェブの未来像の構築に寄与するようになっている。
だが、その先の道のりはまだまだ長い。
たとえば、Redditの「Ask Me Anything」(AMA)で最近交わされたチャットで、IEの開発者はGoogleの「Google Chrome」やMozilla Foundationの「Firefox」の頻繁なバージョンアップを引き合いに出しながら、Microsoftのアップデートの頻度を上げていきたいという意向を示している。一部の開発者は、良いとは言えないIEの評判が自分たちのソフトウェアと結びつかないように、ブラウザの名称変更まで検討しているという。
IEのプラットフォームチームのメンバーであるGreg Whitworth氏は、質問への回答のなかで次のように述べている。「もっと速いテンポで出荷できるようにしたいと真剣に考えている。問題が見つかったときに、さらに迅速に対処できる(新機能の追加もできる)からだ。その方向を目指してはいるが、先が長いことは否めない」
これは美学についての議論ではない。IEの刷新は、「Windows」の優位に陰りが見えるようになったMicrosoftにとって極めて重要だ。開発者の関心は、Appleの「iOS」やGoogleの「Android」といったタブレットとスマートフォン向けOSのモバイルアプリに大きくシフトしているものの、大半のインターネットユーザーは、情報の検索やオンラインサービスには今でもウェブを利用している。ウェブは、それ自体がOSのような存在になりつつある。実際に、ブラウザメーカー各社は、PCやモバイル向けのOSを作成するプログラマーが使う機能を再現しようとしており、「ウェブプラットフォーム」という用語が流行し始めている。
ForresterのアナリストJ.P. Gownder氏によると、Microsoftのブラウザは確かにIE9から大幅に改善されているが、消費者の間で注目を集めているのは、やはりGoogleのChromeだという。
「IEの改善はある程度進んでおり、その使いやすさも向上してきたが、ブラウザに関するイノベーションの象徴となっているのは、今もGoogleだ。それは消費者の選択の問題である。選択の基準の1つは評判であり、製品のパフォーマンスという基準もある」(Gownder氏)
IEは、10年以上前の最盛期には90%を超えるブラウザ利用シェアを誇っていたが、それ以来、IEの影響力はほとんど失われてしまった。最初はPCでFirefoxとChromeにシェアを奪われ、現在はモバイル市場でAppleの「Safari」とGoogle製ブラウザに引き離されている。
Net Applicationsの利用シェア分析によると、IEの利用率はデスクトップマシンでこそ58%だが、モバイルデバイスでは2.5%にすぎないという。しかし、別の調査会社がユーザー数ではなくウェブページのビュー数に基づいて測定したデータでは、現在のIEのデスクトップシェアはわずか24%で、Chromeの49%に遠く及ばず、モバイルでのシェアも2%という悲惨な数字だ。
ChromeとFirefoxは6週間ごとにアップデートを公開している。大きな変更を低頻度で実施するより、小さな変更を絶え間なく送り出すという戦略だ。ソフトウェアをテストしなければならないIT管理者にとっては厄介かもしれない(ユーザーも最初は頻繁なアップデートに慣れなければならなかった)が、ブラウザメーカーは柔軟な対応が可能になる。WebRTC、IndexedDB、WebGLなどの新しい技術が登場と同時にサポートされることもあり、完成度が十分でない機能があったとしても、6週間先送りにすることができ、遅れに関する悪影響もあまりない。
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