季節はずれの熱波が到来しているある火曜日の昼下がり、シリコンバレーのGoogle本社からそう遠くない混雑した道路を走る白のハイブリッドSUV「Lexus RX450h」は、隣の二輪車専用車線を走っている自転車から距離を置くためにほんの10cm分ほどハンドルを切ったうえで、追い越しをかけた。
この自動車を運転しているのがエチケットを身に付けた人間のドライバーであった場合、こういった運転は取り立てて騒ぐほどの話ではないだろう。しかし、上述したのはGoogleの自動運転車に乗っていた際のことなのである。運転中のこのちょっとした操作は、同社の研究開発部門「Google X」の自動運転車プロジェクトチームのメンバーらとともに過ごした1日における印象的な出来事の1つであった。
自動運転プロジェクトの責任者であるChris Urmson氏は、Google本社に程近いところにある、カリフォルニア州マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で開催されたプレスイベントにおいて「人々は運転を嫌がっている」と述べた。そして朝、仕事に取りかかろうとしても「割り込んできたマナーの悪いドライバーに対する怒りを静めるまでに30分はかかる」と語った。
Googleの自動運転車はハンドルを握る人間の過ちをなくすためにGoogleらしいソリューション、すなわちソフトウェアを活用するという野心的なプロジェクトだ。IT分野の巨人であるGoogleのこのロボット自動車は、2009年に開発が始まって以来、70万マイル(約112万km)以上の路上走行を重ねてきている。Googleは2017年から2020年までの間に一般利用の準備を終えたいと考えている。
Urmson氏の述べたその目標は、自動車が安全なものとなる世界を築き上げることだ。米国では年間3万3000人以上が自動車事故で命を落としており、自動車事故は45歳未満の人間の主な死亡原因ともなっている。
このプロジェクトのソフトウェア担当者を率いるDmitri Dolgov氏は「Googleはこの問題を解決するうえでユニークな立場にある」と述べるとともに「マップを解釈し、あなたの現在位置に照らし合わせるという分野すべてについて研究している」と述べた。
これこそGoogleの自動運転車が行っている本質的な作業だ。ただ、ここでの「あなた」は、衝突時には死なないまでも大怪我をするくらいの高速で現実世界という「マップ」の上を疾走している数トンにもなる車両であるため、複雑さという点ではるかにスケールの大きなものとなっている。
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