アドビ システムズは企業のマーケティング担当者や販促担当者向けのセミナー「デジタルマーケティング最前線」を4月10日に開催した。
デジタル出版向けのソフトウェアスイート「Adobe Digital Publishing Suite(DPS)」で作成したビジネスアプリケーションの成功事例など、企業における活用法を紹介するこのイベントのために来日したプロダクトマネージメント シニアディレクター、Ben Choi氏に、DPSの特徴や販促ツールとしての優位性について話を聞いた。
--今回の来日の目的を教えてください。
基調講演を務めるほかに、日本の顧客に会い、デジタルパブリッシングにおけるニーズを聞くために来ました。DPSを4年前に発表し、日本の顧客にも早期から利用してもらっておいます。製品へのフィードバックをもらい、本社に持ち帰って製品チームと共有した上で、今後の製品のアップデートにつなげる考えです。
--DPSを発表してから4年の間、Adobeは、アクセス解析ツールを提供するOmnitureの買収などでデータ分析プラットフォームを取り込み、もともとのクリエイティブ系ツールと連携させたプラットフォームをつくるなど、かなり大きく事業戦略を転換してきました。その中で、今回のDPSはどんな位置づけと考えていますか。
過去数年の間、Adobeは変革を経験しました。従来のパッケージ提供というところから、デジタルサービスの事業へと変換を進めてまいりました。このデジタルサービスへの転換のビジネスの前面に立つのが、このDPSという製品です。
Adobeには主に2つの大きなビジネスユニットがあります。1つがデジタルメディアです。デジタルメディアのビジネスユニットでは「Adobe Creative Cloud」という製品を発表しました。こちらは従来パッケージソフトとして提供していたものを、クラウドサービスベースとして展開しています。
もう1つがマーケティングメディアで、「Adobe Marketing Cloud」を発表しました。Adobeが変化を経験する中で、ツールとサービスを組み合わせたような製品を提供するのがDPSです。
--DPSはどんな製品でしょうか。
タッチデバイス上でのリーディングの体験を、魅力的かつエンターテイメント性高く、学習的なコンテンツとして提供するためのアプリケーション作成ツールです。
例えば出版関係の方は、記事でより読者をひきつけたい場合に、DPSを使ってコンテンツのデザインやインタラクティブな仕様を作成すると思います。その際が、開発者ではなくてもコーディングなしでその作業ができるのがポイントです。編集者やデザイナーは、技術的な部分に意識を取られることなく、自身の作業に集中できます。
iOSやAndroidのタブレットはもちろん、Windows 8向けなど、さまざまなデバイスにも対応しています。もちろんHTMLとの連携やWordPressといった他のコンテンツ管理システム(CMS)とも互換性があります。
--3月のAdobe Summit 2014では、DPSとAdobe Experience Manager(AEM)の統合を発表しましたが、AEMとはどんなものなんでしょうか。
主に2つのコンポーネントから構成されています。1つがコンテンツのワークフローを管理する部分、もう1つが従来からあるコンテンツのコンテンツ管理システムの仕組みの部分です。すべてウェブブラウザベースのインターフェースになっていて、組織によってカスタマイズができるなど柔軟性を持ち合せたツールです。
--ワークフローの管理は具体的にはどのようにしますか?
コンテンツの作成には、編集者、ライター、デザイナーなどさまざまな方が関与しますが、最終的に配信する前の校正段階の一連の作業をシステム的に実施できます。
また、非常に強力なテンプレートエンジンを持ち、元のコンテンツからウェブブラウザ向け、モバイル向けといった他の形式のコンテンツへの変換が容易です。このテンプレートエンジンがある点が、他のCMSとの大きな違いです。このテンプレートエンジンはJavaベースのため、他の開発者がカスタマイズして使っていただけるなどリッチで柔軟な機能を有しています。
例えば、AEMを導入する際には、まず最初にワークフローの部分やテンプレート部分の設定や自社向けのカスタマイズをする必要がありますが、一度設定されてしまえばそれをプラグインというようなかたちでDPSと組み合わせて使えます。ウェブ用に作成したコンテンツをそのままモバイルアプリケーションで配信できるのです。
--DPSとAEMの統合によるメリットの具体例は?
プラットフォームの拡張性です。DPSとAdobe Analyticsとも親和性が高く、DPSの中でAnalyticsの結果を表示することもできます。
エンタープライズ向け有用性としては「エンタイトルメント」も挙げられます。エンタイトルメントとは、ユーザー権限のようなものと考えてもらえれば分かりやすいのですが、どのコンテンツにどのユーザーがアクセスできるのかを細かく設定できます。
例えば、雑誌に関して言えば、購買者に対して有料のコンテンツに対するアクセス権というのがあります。企業側の観点からすると、保護されているコンテンツをアクセス権を持っている特定のユーザーに対して表示を可能にするというのがエンタイトルメントの意味です。
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