(編集部注:ウェブ誕生から25年に際して米CNETが公開したTim Berners-Lee氏のインタビューを前編と後編の2回に分けて翻訳して公開します。前編は3月17日に公開されています)
--最近では開発の取り組みの多くがGoogleやAppleのアプリストアで配信されるモバイルアプリに向けられており、それらは多くの場合、さまざまなサービスと垂直統合されています。これはオープンで相互に連結されたウェブの世界と正反対のものです。このことに関して、どの程度の懸念を抱いていますか。また、失われつつある開発者の勢いを取り戻すために、何かあなたにできることはありますか。
Berners-Lee氏: 確かに懸念を抱いており、私はそれらをレガシーアプリケーションと見なしています。さまざまなカンファレンスで、私はウェブアプリを開発するよう勧めます。ネイティブアプリとして開発された雑誌を利用したら、ウェブと適切に連携しないことに気づくと思います。そうしたアプリが力強さに欠けていることには根本的な哲学的理由があります。URL(ウェブアドレス)が付与されていないものについては、ツイートすることができません。ツイートしたり、電子メールで送信したりできないのなら、それは話題にはなりません。したがって、ネイティブアプリ上で美しく見える記事もウェブの世界の一部にはなりません。話題や生活の一部になることもなければ、ユーザーから支持を表明されたり、軽蔑されたりすることもありません。これからは、ウェブの一部になるということが重要になるでしょう。
要するに、両方の世界の最も優れた部分、つまり、ネイティブアプリとウェブのすべての利点の統合に向けて努力することです。例えばフィットネストラッカーは、どんなときも動作してほしいと思います。オフライン状態であっても、ネイティブアプリのように動作するといいでしょう。しかし、日々の運動の記録にはURLが付与されるので、そのリンクを友人に知らせることができます。
--プログラミングの視点から考えた場合、まず低レベルの規格を策定し、人々がそれらを使って、自分が必要とする高レベルの機能やインターフェースを構築できるようにすべきなのでしょうか。それとも、逆に多くの自動化ツールを備えたライブラリの構築に集中し、さらに多くのプログラマーにウェブの門戸を開くべきなのでしょうか。ウェブをプログラム可能なものに変えるという概念を私はまだ完全には理解できていません。
Berners-Lee氏: この理念は、拡張可能なウェブ理念とも呼ばれており、その両方をすることです。低レベルと高レベルの両方を開示します。現状では、開発者はより高レベルでプログラムを行います。つまり、ウェブページを取得して、たった1行(のプログラミングコード)でURLをウェブから離れた大量のデータに変えます。しかし、開発者が望んだ場合、そのコードをブラウザに再実装できる手段があってしかるべきです。ブラウザのコードを開発者独自のJavaScriptで置き換えられるようになれば、開発予定の機能を試すこともできます。自分の開発したコードスタックが便利で、多くの人の支持を得ることができたら、ブラウザの新機能として公開されるでしょう。
TAG(Technical Architecture Group。W3Cの技術諮問委員会)の関係者たちはレイヤ構造について話しています。低レベルのものに関して、高レベルのものを記述し直すことができます。
--私の見る限り、この1年間でウェブに起きた最大の変化は、Edward Snowden氏のリークによって、人々のウェブに対する見方が変わったことです。可能な限り多くの情報を入手しようとする政府の組織的な取り組みが暴露されたことで、あなたのウェブに対する見方はどのように変わりましたか。
Berners-Lee氏: NSA(米国家安全保障局)とGCHQ(英政府通信本部)がウェブを監視していることに私は驚きを感じませんでした。説明責任の仕組みを全面的に見直す必要があることは明白だと思います。先ごろ、ネット上のプライバシーというテーマで、マサチューセッツ工科大学(MIT)とホワイトハウスのワークショップが開催されました。技術的な面でも社会的な面でも、これは単純な問題ではありません。単に大声が飛び交うだけのワークショップではなく、参加者は複雑な詳細について考えました。政府機関が巨大で包括的なデータセットを持っているのなら、個人に損害を及ぼすことなく、そのデータの利用方法を管理するにはどうすればいいのでしょうか。それを解決するための方程式は複雑です。
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