20年前の4月30日、欧州原子核研究機構(CERN)が「オープンウェブ」と呼ばれるものを生み出した。ライセンス料やロイヤリティーの支払いなしで、誰でも構築できるテクノロジだ。
しかしウェブが広く普及し、高度になるにつれて、プロプライエタリテクノロジがそうしたオープン性という哲学に難しい問題をもたらしている。その難題が最も明白に表れているのはビデオの分野だ。この分野の特許とコピー防止技術は、ウェブのオープン性にそぐわない。
CERNの物理学者だったTim Berners-Lee氏は、自ら「World Wide Web」(WWW)と名付けたものの開発を1989年に始めた。CERNがそのソフトウェアを1993年4月30日に無料公開すると、ウェブは瞬く間に広まり、世界的な発信メディアになった。
現地時間4月30日に、CERNはその初期のウェブコンテンツを再構築し、オープン性への取り組みにスポットライトを当てるプロジェクトの一部として、世界最初のウェブサイトを再公開した。
Berners-Lee氏とCERNは、それ以前のインターネット専門家の例にならうことを選んだ。そうした専門家たちは、オープン性を選択することで、TCP/IPネットワーク規格のような影響力の大きいソフトウェアが素早く普及するようにし、その結果、最終的にはIBMの「Token Ring」やDigital Equipmentの「DECnet」、Novellの「IPX/SPX」のようなプロプライエタリソフトウェアに打ち勝った。
ウェブが成長する中で、その周辺要素は比較的オープンなまま保たれた。その標準化団体であるWorld Wide Web Consortium(W3C)は、特許問題のあるテクノロジを明示的に回避している。さらに米UnisysがGIF画像の特許使用料を要求し始めると、W3Cは無償で使用できるフォーマットとして、PNGの開発を支援した。
ウェブへのビデオの登場は別の力をもたらしたが、その理由は2つある。それは特許とデジタル著作権管理だ。しかし長年にわたって、ウェブビデオのほとんどはAdobe Systemsの「Flash Player」を使っていたため、ウェブからは一歩遠ざかったところにあった。ユーザーは自分のブラウザでビデオを見ることができたが、そのプロプライエタリテクノロジはウェブ標準そのものではなく、Adobeのプラグインを使っていた。
しかし現在ではFlashは衰退しつつあり、プロプライエタリのビデオテクノロジはウェブそのものへと移行しつつある。
「Firefox」を作っているMozillaのような団体はプロプライエタリテクノロジに反対しているものの、そのテクノロジは必ずしも悪いものではない。しかし、プロプライエタリテクノロジはウェブを使用したい個人や企業に費用という荷を背負わせる可能性がある。
最初にプロプライエタリテクノロジが入り込んだのは、ビデオ圧縮の分野だった。JPEGやGIF、PNGが転送と保存の効率アップのために画像を圧縮したように、コーデックと呼ばれるテクノロジはビデオとオーディオを圧縮している。
支配的な圧縮コーデックは間違いなく、「H.264」または「AVC」と呼ばれる業界標準だ。ビデオ配信、カメラ、DVDなどで使われている。それは十分に理解されており、プロセッサのサポートがあるため、スマートフォンのようなデバイスはバッテリ持続時間をそれほど無駄にせずに、H.264ビデオのデコードが可能だ。しかし、ソフトウェアやハードウェア、ディスク、送信、有料ネットストリーミング動画などでH.264を使用する場合には必ず、MPEG LAと呼ばれるグループを通じて、特許権者に特許ライセンス料を支払わなければならない。Flash PlayerはH.264だけでなく、ほかのコーデックもサポートしている。
グラフィックスのサポートはかなり初期の段階からウェブに組み込まれていたが、ビデオはそうではなかった。しかしブラウザメーカーはこの10年間、ウェブページの記述言語であるHTMLを、現在はHTML5と呼ばれるバージョンにアップデートすることで、その状況を変えようとしてきた。
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