CNET Japan Live 2013

顧客満足度を高めるデジタル戦略とは--サントリーとソフトバンクが指南

 ITビジネスのオンラインメディア「CNET Japan」を運営する朝日インタラクティブは12月10日、マーケティングを軸にしたビジネスイベント「CNET Japan Live2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」を開催した。ここでは、同日に開催されたパネルセッションの内容をお届けする。

 「消費者に響くメディア戦略:サントリー×ソフトバンクモバイル」と題したパネルセッションには、サントリーホールディングス コーポレートコミュニケーション本部 広報部デジタルコミュニケーション開発部課長の石原洋子氏と、ソフトバンクモバイル マーケティング本部Webコミュニケーション部企画課課長の岩本嘉子氏、そしてモデレーターに朝日インタラクティブCNET Japan編集長の別井貴志が登壇した。

広報部の資産を活用してブランディングを図る


サントリーホールディングスの石原洋子氏

 石原氏は、サントリー全体のデジタルコミュニケーションを担当している。サントリーのウェブサイトは、PCやモバイルなどすべてを合算して月間2億ページビュー(PV)を超えており、毎月600万ユニークユーザーを達成しているという。近年では、TwitterやFacebook、YouTubeやLINEなどを活用し、企業や商品のブランディング活動もしている。岩本氏は、ソフトバンク全体のウェブサイトやソーシャルメディア運用に携わっており、コンテンツやソーシャルメディアの投稿も社内で内製しているという。

 同日は2社の具体的な活動や事例が紹介された。サントリーは、ザ・プレミアムモルツの広告に歌手の矢沢永吉氏を起用。商品の魅力を伝えるために、従来の15秒ではなく90秒のCMを制作した。YouTubeなどの動画サイトに投稿し、100万PVを目指して動画再生の施策を実施したそうだ。

 石原氏は「これまで事業部や広報部がオンライン上の施策を考えていたが、広報部としてもっとできることがあるのではと考えた。自社サイトや会員サイト、メルマガでの情報発信だけでなく、CMが初めてテレビで流れる数時間前にTwitterなどで事前に告知したり、CMを見逃した人に対して動画のリンクをシェアした結果、多くの反響をいただいた」とコメント。広報部が持つ資産を活用することで、自社のブランディングに貢献できたと説明する。

顧客の目的は何かを考え、仮説検証から実行する

 岩本氏は、ソーシャルメディアを活用した事例として、店頭へ来店した顧客にLINEスタンプをプレゼントするなど、コミュニケーションを軸にした施策を紹介。

 「投稿内容などは、社内の人間ですべて対応している。ソーシャルメディアの活用やウェブサイトへの広告出稿が、どれだけ顧客獲得に貢献しているのかをデータ化し、効果測定をしている。データ分析と見積りによって、投資とリターンを計算しながら経営陣への判断材料を整えた。予測と検証、効果測定を通じて最適なコンテンツやコミュニケーション施策を研究することが大切」(岩本氏)。


ソフトバンクモバイルの岩本嘉子氏

 ソフトバンクは、顧客満足度調査にも力を入れている。ウェブサイトの来訪目的を調査したところ、月々の請求書などを確認する顧客情報管理が最も利用されているとする結果がでたが、それまでは顧客情報管理のユーザーエクスペリエンス(UX)の重要性を認識していなかったと岩本氏は振り返る。そこでアクセスが多い情報を精査し、それらのウェブサイトの該当箇所を使いやすくするなどの施策を通じて、顧客満足度を高めていると説明する。

 「どういった目的でウェブサイトに訪れるかといった、顧客のゴールを把握することが大事。それらは、単純なPVや滞留時間だけでは分からない。ユーザーヒアリングなどの調査を通じて、より最適なページを作ることが重要」(岩本氏)。

 石原氏も、ウェブサイトの重要性について言及する。「情報の受け皿としての自社サイトはとても重要。ソーシャルメディアの投稿のリンク先のページがスマートフォンに対応していないと、顧客に対して信頼を失ってしまう。スマートフォンが普及してくる中、企業のウェブサイトもスマートフォン最適化を図るように社内に働きかけた」と述べ、手を抜きがちな自社サイトこそ重要な要素だと語る。

勉強会や実績のデータ化を通じて社内の共有を図る

 デジタルを通じたコミュニケーションの重要性を社内に浸透させるため、石原氏は2007年から定期的にウェブ活用説明会という名の勉強会を社内で企画している。「デジタルに関する市場の情報やサントリー全体の取り組みを包括的に知るための場、ソーシャルメディアの普及などによってアカウント情報や運用方法を共有する場になっており、ウェブに関係するほとんどの部署に声をかけている」(石原氏)。

 社員数が多い企業においては、社内の取り組みすべてを共有する場は思いのほか少ない。こうした社内の情報共有を円滑にするための効果も持っているのだという。さらに、成功事例や失敗事例など、社内だからこそ共有できる事例をもとに、グループ会社全体の一体感を持たせるための施策だと語る。

 「社内全体における活用推進やリスク啓発、ルールの徹底などが、コーポレート部門としても必要な取り組み」と石原氏は語る。ウェブに携わる人はこれまでは限られていたが、これからはTwitterやFacebookなど、全社員がウェブに何かしら関わる時代となる。こうした社員全体の底上げを通じて、自社の事業推進をしているという。

 岩本氏は、勉強会自体は開催していないものの、各部門が行っているデジタル施策の実績をデータ化し、経営陣やウェブに携わる関係者に共有していると説明。これにより、施策の成功方法や結果が常に共有される仕組みを作ることができると語る。

 「ソフトバンクはFacebookやTwitterに一番力を入れており、フォロワー数が1000万規模となった。なぜ力を入れるか。それは、サービスや端末が多い企業であるため、それらすべてを統一し、ソフトバンク全体の活動を知ってもらうための認知活動だと考えている」(岩本氏)。

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