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情報を価値に変換するマーケティング戦略の留意点--慶応ビジネススクール井上教授

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 朝日インタラクティブは10月31日、「CNET Japan Conference 2013マーケティング・インテリジェンス実現セミナー」を開催した。テーマは「~今、考える。ビジネスをドライブするマーケティングのあり方~」。マーケティングのデジタル化により、企業経営が大きく変貌するなか、マーケティング部門が、どのような取り組みを進めるべきか。その手がかりとなる最新情報や方法論・実際の運用テクニックを紹介した。

ビッグデータにおぼれるな

慶應義塾大学大学院経営管理研究科・慶應ビジネススクール教授の井上哲浩氏慶應義塾大学大学院経営管理研究科・慶應ビジネススクール教授の井上哲浩氏

 基調講演には、慶應義塾大学大学院経営管理研究科・慶應ビジネススクール教授の井上哲浩氏が登壇した。表題は「拡大するデータ・メディアに対応すべくマーケティングの新課題」。ビッグデータへの視点、メディアの側面の理解の重要性、留意すべきマーケティング戦略、マーケターの前に潜む陥穽などについて解説した。

 いまICT産業界で最も重要なテーマの一つとなっているビッグデータについて、冒頭で井上氏は「マーケターは、ビッグデータにおぼれてはならない。自分の課題に適した、必要なデータを抽出することが必要」と呼びかけ、「15年程前のデータマイニングブームのときも、いまと似かよった状況があった」と振り返った。

 さまざまな事業活動の中で発生するデータマイニングは、大量に蓄積されるデータを分析し、データの相関関係や一定の法則性などを探し出す技術だ。「当時はデータさえあれば、どんなことでも可能といった風潮さえあった。しかし結局はGIGO(Garbage In, Garbage Out)、つまりゴミの中からは、ゴミしか出てこない。無意味なデータを分析しても、意味はないということ。適切なデータをみつけ、分析手法を理解することが重要。そしてビッグデータ時代のマーケティング戦略では、情報をいかにして価値に転換するかが有効な視点になる」と井上氏。

講演資料より。(上段)マーケターはリアルもネットも使う事ができ、これを統合させて仕掛けることができる。(下段)カスタマーも同様、百貨店とオンラインショップといった、リアルもバーチャルも使う。その両者間で発生するインタラクションにおいて鍵を握るのが情報(knowledge)だ。膨大な情報を様々な形式で類型化し、価値に変換していく。

 その具体的な例が、ソーシャルメディアが持つ豊かな情報資源だ。ここから発信される、エンドユーザーの千差万別な意見や志向に焦点を当てることで、企業は傾向の類推や自社商品に対する評価、あるいは改善点などを調査し分析するソーシャルリスニングが可能になる。外部に多様な場をつくるソーシャルメディアの資源をいかに内部化し、価値に転用するか。その発想が大きな鍵となるのだ。

行動データと態度データの区別

 またビッグデータを扱う際、マーケターが特に注意すべき点として、“行動のデータと態度のデータは異なる”ことがあるという。井上氏は「たとえば、自動車のフェラーリを好きだという人々は大勢いるが、実際に買う人たちは、それほど多数というわけではない。企業が収益を上げるには、行動が重要になる。この双方のデータは区別し、行動データが下にあり、それを説明するものが態度データというように、階層的にみるべき」と例えた。

企業が収益を上げるには、消費者の行動が重要であり、態度とは区別する必要がある。Ajzen and Fishbeinが提唱した行動意図モデルでは、消費者が製品を購買する/しないを決定する要因をこのように定義し、数式化している。

 さらに「ビッグデータのredundancy(冗長性)にも気をつけるべき」という。ビッグデータには、redundancyが非常に多く含まれており、この部分を取り除いたうえで解析しなければならないからだ。

 井上氏は「ビッグデータは膨大であるがゆえ、適切な部分を抽出すべき。また、どのようなプラットフォーム、あるいはメディアの上のデータなのかということも重要になる。マーケティングの視点から、分析ツールにはどのような側面があるかを考え、情報を価値に変換し、新しい時代に対応したマーケティング戦略を立てるべき」と呼びかけ、講演を終えた。

 井上氏に続いたのは以下の各セッションだ。また、最終講演をつとめたのは、リクルート住まいカンパニー データマーケティンググループ チームリーダーの吉永恵一氏で、「SUUMO流_ビッグデータの活用術」と題して同社の事例を中心に講演した。

アイ・エム・ジェイ Marketing&Technology Labs プロフェッショナルサービス室 カスタマーサクセスグループ マネージャー山本崇博氏
「オムニチャネル時代のマーケティング戦略~データをビジネスに活用できる企業になるには~」
クリックテック・ジャパン マーケティング本部 本部長 安部知雄氏
「データを使いながら試行錯誤できる分析プラットフォーム『QlikView』」
シナジーマーケティング CRMインサイトラボ フェロー後迫彰氏
「顧客の本質理解のための社会的ビッグデータ『iNSIGHTBOX』」~日本人の価値観類型『Societas』の活用~」
サッポロビール 営業本部 企画推進部 デジタルマーケティング室 森勇一氏/ユーザーローカル コーポレートセールス ディレクター渡邊和行氏
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