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組織の透明力

経営を劇的に改善するキーワード「真実の瞬間」とは - (page 5)

斉藤徹(ループス・コミュニケーションズ)2013年10月28日 08時00分
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歩く広告塔、ファンをいかに醸成するか

 75ページにもおよぶグーグルの「Winning the Zero Momoment of Truth」には、時代の変化に直面しているマーケッターの印象的な言葉が紹介されている。

 「メッセージをコントロールする時代は完全に終わってしまった。消費者とともに創り、消費者たちとともに参加するのが最良の方法なのだ」――コカコーラのウェンディ・クラーク氏は、消費者とブランドの新しいリレーションについて語っている。

 グーグルの提言は、ZMOTの入り口、つまり企業がコントロールできる「ネット検索」に関するものだったが、より大切なことは、そこで消費者がいかなるクチコミをしてくれるのかだ。直接コントロールできない「消費者の気持ち」といかに向き合い、その共感や信頼を得られるか。すべての「真実の瞬間」において、消費者とブランドの深い関係性をいかに築いていけばいいのだろうか。

 そんな新しい時代のマーケティングのあり方を体現し、驚くべき急成長をしている会社が中国にある。創業わずか3年にもかかわらず、アップルやHTCを上回る実績を上げているスマートフォン・メーカー「小米」だ。小米は、販売ネットワークを持たず、オンライン直販のみ。それに製品ラインはわずかに3機種だけだ。

 経営をシンプルにする一方で、徹底的にこだわっているのはファンの醸成だ。創業者の雷軍氏は中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれ、熱狂的なファンに行く先を囲まれる。小米ファンは自らを「米粉」と呼び、登録会員数だけで約900万人に達した。中国各地に「小米之家」というカスタマーセンターをつくり、ネットには「小米フォーラム」を開催する。ファンからの意見に基づき、毎週アプリ更新を行う。製品ポリシーは「製品発表時にユーザーが叫び声をあげること」「購入後にユーザーが人に勧めること」の2点のみ。まさにファンのファンによるファンのための会社と言えるだろう。

 同社は世界でも類をみない勢いで成長し、わずか3年で売上2040億円、時価総額ではなんと1兆円を超える企業となった。熱狂的なファンの力がどれほど強力か、小米の急成長が雄弁に語っている。

 ZMOTにおいては、コントロールできるものよりコントロールできないもの、企業発信よりも生活者発信の比重が増すことは間違いない。消費者がつながり、かってないパワーを持つ時代において、彼らの力を最も追い風にできるのは、熱狂的なファンを持つ会社だろう。「なんとなく好きな製品」ではなく「熱狂的に好きな製品」を世の中に出すこと。スカンジナビア航空のごとく顧客の脳裏に刻み込まれるような「真実の瞬間」を提供すること。それを繰り返すことで「ロイヤルティループ」を構築することだ。

 日本的な商いの礎に「おもてなしの心」がある。日々触れ合う人々に心から感謝して思いやる優しい心をあらわす言葉だ。その「おもてなし」の語源はふたつあるという。ひとつは「モノを持って成し遂げる」ということ。もうひとつは「表裏なし」つまり表裏のない心でお客様をお迎えするということ。テクノロジが僕たちビジネスパーソンに突きつけていること――それは「真実の瞬間」におけるお客さまへの「おもてなし」の心、企業としてその瞬間の体験に集中する姿勢と言えるかもしれない。

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