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組織の透明力

経営を劇的に改善するキーワード「真実の瞬間」とは - (page 4)

斉藤徹(ループス・コミュニケーションズ)2013年10月28日 08時00分
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 「第二の瞬間」の顧客満足を得るためには、消費者を深く理解する必要がある。そのためにP&Gは消費セグメントごとに独自のオンライン・コミュニティを構築していった。「Being Girl」は少女を、「Pampers」は幼児を持つ母親を、そして「Vocalpoint」は30〜49歳の母親層を対象とするコミュニティだ。同社は彼女たちに交流の場や話題を提供し、本音の会話からその深層心理を探求した。深い顧客理解に基づいた商品を開発し、「第二の瞬間」の満足を導いたのだ。

 小売チェーンとのつながり強化による「第一の瞬間」における価値創造、そして消費者とのつながり強化による「第二の瞬間」における価値創造。二つの「真実の瞬間」に総力を注いだラフリーは、結果的に7年間で売上高2倍、純利益3倍という大躍進を実現する。現代に至るまでその勝利は続き、同社は世界最大級のブランド群を構築するにいたっている。

テクノロジが創出した新たな購買モデル「第ゼロの瞬間」

 P&Gの経営改革着手から10年たった2010年のこと。グーグルは、ラフリーの提唱した「第一の瞬間」「第二の瞬間」を継承した上で、ネット時代の新しい購買意思決定モデル「第ゼロの瞬間 Zero Moment of Truth」を発表した。わずか10年の間に消費者の行動はネットにどっぷりと依存するようになった。米国人の70%は商品購入前にオンラインレビューをチェックしており、母親の83%はテレビCMで興味を持った商品についてオンラインで調べるという。

 消費者は店舗に行く前にネットで製品を検索し、購買行動を決定しているのだ。eコマースの世界はもちろんのこと、リアルな商売にもネット上の行動が色濃く影響するようになってきた。店頭に来る前に、勝負が決まってしまう。第一の瞬間を「インストア」、第二の瞬間を「インハウス」だとすれば、第ゼロの瞬間は「プレストア」の購買行動と言えるだろう。

 消費者が購入前にチェックする情報源は、2010年の平均5.3個に対して2011年は平均10.4個と、わずか1年で急増している。その結果、購買決定への影響において「第ゼロの瞬間」が84%と「第一の瞬間」の77%を上回った。しかも79%の消費者は買い物の際にスマートフォンを活用し、時間と場所を問わず、興味のある商品やサービスを事前調査している。彼らはファネルのように直線的には行動しなくなった。リアルタイムかつインタラクティブで複合的なのだ。


The shopper's multi-channel Jorney

 では、この「第ゼロの瞬間(以下、ZMOTと省略)」に勝利するために、企業はどのような行動をとればいいのだろうか。グーグルは、次のようなプロセスを提唱している。

  1. ZMOT責任者を決め、予算を付与する まず、ZMOTの責任者を決め、必要な権限と予算を与えることからはじめる。彼がパートナーと協業し、以下に示すようなZMOT戦略を策定するのだ。人選において大切なポイントは、自ら課題を見つけてその解決に取り組めるセルフスターターのマインドセットを持っていることだ。

  2. 想定顧客と、そのZMOTを発見する 消費者が、自社製品をどのように検索しているかを正確に理解する。グーグルは消費者視点の検索として「製品名」「製品名 + 評判」「製品のカテゴリ + 人気 / 安い / 最高」という3つの検索キーワードを推奨している。この際、自らが検索してほしいキーワードと消費者が実際に検索するキーワードはまったく異なることに注意する必要がある。

  3. 消費者が質問していることに答える 検索キーワードから「消費者が知りたいこと」を正確に把握し、それに対して回答する努力をすること。例えば「ドッグフード 原材料」と検索すると、検索結果に「今なら2ドル割引」などとドッグフードの値引き情報が表示されるが、これでは消費者の関心を惹くことはできない。彼らの探している情報はあくまでもドッグフードの原材料だからだ。企業はまず原材料の質問に答えるページを用意し、そこに値引き情報を交えることだ。そのページの直帰率が30%以上の場合、検索者の期待した内容と、自社ページに書かれた内容に大きなギャップがある可能性が高い。

  4. ZMOTを最適化する いかに消費者の質問に応えるかという観点でZMOTを最適化すること。例えばオバマ陣営は、ヘルスケアについて人々がどういう質問をしているかを注意深く観察した。そこで彼らは「What’s in the health care bill?」というシンプルな質問フレーズが多いことを発見し、ホワイトハウスのウェブサイトに「What’s in the health care bill?」というタイトルのブログを投稿した。この質問で検索すると先頭にホワイトハウスのブログが登場するようになったのはもちろんのことだ。

  5. すばやく動く ZMOTの改善においては、完璧さよりスピードを優先すること。年間計画をしっかり練るといった伝統的なマインドセットではなく、すばやくフレキシブルに行動することが大切だ。躊躇せず、直ちに始める。テストし、学び、最適化する。それをすばやく繰り返し、早く失敗すること。そこから多くを学ぶことこそが成功に近づく秘訣なのだ。

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