モバイル時代の新しい消費--リアルなユーザー体験がキーポイント

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 全世界8都市で展開される、世界最大級のデジタルマーケティングイベントの一つであるアドテック東京(ad:tech tokyo)が、9月18日、19日の2日間にかけて開催。2日目は「モバイル時代の消費者行動変化」と題されたセッションが行われた。

 登壇したのは、D2Cドコモメディア事業本部 本部長の篠崎功氏、楽天執行役員 楽天市場事業編成部部長の河野奈保氏、クックパッド 買物情報事業部部長の沖本裕一郎氏、セレゴ・ジャパン マーケティングディレクターの鈴木知行氏。モデレーターは、グロービス経営大学院准教授の川上慎市郎氏が務めた。

  • グロービス経営大学院准教授の川上慎市郎氏

 初めに、モデレーターの川上氏よりモバイルの変化を説明。「ボタンからタッチというインプットの変化、文字から画像や音声というアウトプットの変化、そしてTwitterやFacebook、LINEといったコミュニケーションプラットフォームの統合がなされている」(川上氏)

 こうした流れは、ユーザーの行動が常時ネット接続による、その場での検索・確認や情報の受発信の容易さ、スマートフォンによる写真撮影の手軽さなどが生まれた。これによって、即時性の重視や感情の共有、人のつながりの生まれやすさ、テキストから視覚的なコミュニケーションといった、ユーザーの価値観がシフトしてきているという。

 これらを踏まえて、登壇者それぞれの立場から、モバイルによる消費者行動の変化と今後について語られた。

消費者の購入行動におけるリーン消費が加速

  • D2Cドコモメディア事業本部 本部長の篠崎功氏

 篠崎氏は、「結論から言うと、消費者の購入意識決定の無駄がなくなった」という。調査によると、スマートフォンとPCのアクセス時間がほぼ同程度となり、女性はほぼスマートフォン中心の生活になりつつあると語る。情報収集の接点としても、インターネット上で新しい情報を知る手段として、すでに30%以上の消費者がスマートフォン経由であり、これは今後も上昇していくと予測している。

 「60%以上の消費者が店頭で情報検索した経験があり、比較検討や口コミ検索はもはや当たり前な状態になっている。さらに、買った人がその様子をソーシャルメディアを通じて発信するようになり、リアルタイムで情報のやりとりが起き、消費者同士で新しい消費を喚起するようになっている。スマートフォンの登場により、購買行動において、無駄を排除するリーン消費が加速している」(篠崎氏)

モバイルとPCの連動で売上は向上

  • 楽天執行役員 楽天市場事業編成部部長の河野奈保氏

 河野氏は、楽天市場におけるスマートデバイスのシェアについて、すでにアクセスは50%を越えているという。流通額は、現在は30%強程度であるが、来年度には50%を突破するであろうと見越している。そうしたモバイルシェアの拡大に向けて、楽天では「ファーストタッチデバイス、リッチコンテンツ、リアル連携」の3つのキーワードを掲げている。

 「外出先や、移動中にスマートフォンを使って買い物検索をする人が40%、実際に購入する人が15%程度というのが現在の状況。統計の結果から、スマートフォンのみで購入、スマートフォンで確認してPCで購入、PCだけで購入という3パターンに大きく別れることが分かった。これは、最終購買の出口が違うだけであり、スマートフォンがあるからこそ、PC購入における売り上げも貢献していることが数字でも判明している。コマースがPCだけで完結せず、スマートフォンからPCへのクロスデバイスの考えを持つことが大事」(河野氏)

 スマートフォンで商品を発見したことにより、PCの購買に結びつくからこそ、PCによるECサイトもスマートフォンへの意識を向けることは必要不可欠だと語る。また、モバイルにおいて、写真や動画を活用することで購買転換率は大幅に向上するという。店舗によっては、動画を活用し商品のストーリーテリングといった、リッチコンテンツを通じて購買転換率も30%増加。さらに、モバイル画面も楽天独特のロングページにおいて写真を多用したリッチコンテンツ化を図り、その結果、購買転換率は20%増加したと語る。モバイル上において、画像や動画による訴求率は高いと言えるだろう。

 リアル連携は、アプリと連動してバーコード検索から商品検索サイトへの導線を作ったことで、購買転換率が向上したという。「今後は、アプリにおいて、バーコードではなく商品の画像検索を通じて販売サイトへの導線を図り、スマホから直接購買につないでいきたい」(河野氏)

店舗自身が情報を発信することでリアルへ集客

  • クックパッド 買物情報事業部部長の沖本裕一郎氏

 現在、月間ユーザー数が2000万を越え、150万件以上ものレシピを掲載しているクックパッド。すでに、ユーザーの利用率はPCからタブレット、スマートフォンといったモバイルデバイスが上回っており、今後ますます増えていくモバイル利用に対して、利用を促進するサービスに力を入れていくという。

 そうした中、商店街などの店舗と連携し、アプリ内にて特売情報といった買物情報を発信するサービスを提供している。これによって、1万店舗以上もの店舗スタッフが、自身のスマートフォンを通じてその日の特売情報やおすすめ商品情報を発信し、アプリ内にて特定のレシピやキーワードを入力したユーザーに、近くの商店のそれらの特売情報を表示させ、リアル店舗への導線を作り購買につなげているという。

 「利用者の多くは、レシピから買う商品を連想するのと、特売情報からレシピを決める、といった行為がシームレスになっている。特売情報とレシピといった、買い物から調理の流れを抑えることで、よりユーザーにとって便利なサービスを目指していく」(沖本氏)

 いつでもどこでも検索可能となり、さらにリアル店舗への誘導が生まれたことで、商品選択やスーパーに行く時間の短縮が起きているという。また、レシピと特売情報の検索連動広告は、これまでの検索連動広告などに比べて10倍近いCTRの差が生まれており、サービスとしての可能性を十分に感じていると語った。すでに15万人以上のユーザーに利用されており、今後ユーザー数の増加を図っていくという。

モバイルとリアルの相性を逆手に取った新プロモーション

  • セレゴ・ジャパン マーケティングディレクターの鈴木知行氏

 鈴木氏は、現在のモバイルの流れになったことで、そもそものマインドセットを変えることが大事だという。

 「モバイルシフトによって、広告のあり方も、単純なモバイル広告ではなくOOHなどのリアルな筐体が使えるかもしれないという発想が生まれる。いつでもどこでも検索してもらえる環境に、リアルなものを介在させることに新しい方法を見出していく」(鈴木氏)

 取り組みの一つとして、セレゴ・ジャパンは今回のアドテック東京で初めての試みである、同時通訳レシーバーを通じたプロモーションを実施した。iKnow!という英語学習サービスのPRとして、アドテック東京のオープニングキーノートにおいて、英語学習を必要としているサービス対象者である同時通訳レシーバー装着者に向けたゲリラプロモーションを実施し、英語を学習することへの興味関心を高めるアプローチを展開した。このプロモーションを通じて、英語を始めるきっかけを提供し、英語学習を始めることを訴求するプロモーション施策を図ったという。

 「このゲリラプロモーションによって、その場でiKnow!をダウンロードしたユーザーが多くいた。もはや、モバイルによって検索するだけではなく、アプリ購入といった直接的な行動をユーザーは行い始めている。こうした行動にマッチした、最適なコミュニケーションの方法を考えるというマインドチェンジが必要だ」と、鈴木氏は語る。

 撮影したり、その場でアプリをダウンロードするといったモバイルならではの導線を通じて、ウェブという空中戦な発想ではなく、リアルに何を届けるかで、ブランドの価値も高まるという。モバイルによってユーザー体験を作り、プロダクトに対する熱量を、モバイルと相性の良いリアルの場を通じて発信するという手触り感をどのように作るかを、デジタルマーケティングにおいても考えなければいけないと鈴木氏は語る。

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