この6月9日から4日間、米フロリダ州マイアミで開催された全米IR協会(NIRI)の年次大会。
米国をはじめ世界各地から約1300人ものIR(Investor Relations)関係者が集まった。IRの最新トレンドを知る絶好の機会だ。グローバルな機関投資家の動向や各国の開示規制など例年通りの多くのテーマが並ぶ中で、今回はソーシャルメディアやモバイルをキーワードにIRを論じるパネラーが少なくなかった。
なかでも大手ニュース配信会社幹部の指摘が耳に残る。「いまや時代は、印刷文書や新聞の文字の時代→ラジオ・テレビの放送によるエンターテインメントの時代→インターネットによる情報の時代→モバイルによるソーシャルメディアの時代に突入した」。
そして、「モバイル機器に載る情報の影響力はとてつもなく大きい」と指摘した。
モバイルのスマートフォンやタブレット端末は、テザリング機能でインターネットにリンクする。
だから、「投資家がどこにいても、3つのスクリーンでつながろう!」(米大手IR支援業者)という提案に訴求力がある。
デスクトップ、タブレット端末、スマートフォンの3つのスクリーンから自社のウェブサイトにアクセスする時代なのだ。
4月、米証券取引委員会(SEC)は「今日の市場におけるソーシャルメディア・チャンネルのもつ価値やその普及ぶりを高く評価し、各社のこうした新たなコミュニケーション方法の追求を支持する」立場から、ソーシャルメディアを利用した重要なIR情報の発信を認めた。これもトレンドなのだ。
すでにIR業界は3つのスクリーンの時代を先取りして動き出している。
例えば、各社のウェブサイトに掲載されるオンライン版アニュアルリポートの場合を考えてみよう。
まず、デバイスの違いに関係なく、アニュアルリポートに簡単にアクセスできるかどうかである。
もちろん、それぞれ図表や画像は自動調整され、サイズも最適化されるのは当然だ。
次は、どれほど長く自社のウェブサイトにとどまってもらえるか、だ。具体的には、1つのページを見ただけでそのウェブサイトから去っていく閲覧者の割合を示す直帰率の数字をどのように低くできるかどうかである。
オンライン版アニュアルリポートに仕組まれた双方向機能が有効だろう。株価や財務などの情報を双方向にやりとりすれば、同じページに長くとどまるからだ。もちろん、自社の情報提供や投資家の理解を深めるチャンスも広がる。
昨年シアトルで開催されたNIRIの年次大会はソーシャルメディアに取り組む欧米企業の実例が多く紹介され、会場は熱っぽい雰囲気に包まれた。
今回の大会は、IR活動にソーシャルメディアを持ち込んだケース・スタディで参加者は実務上の業務や問題点をめぐって熱っぽい議論を重ねた。いつまでも話のキリがつかないグループも目立った。
マイアミの年次大会に、日本企業のIR担当者は見当たらなかった。昨年と同様、日本からの参加はもちろん、ニューヨークなどに駐在するIR担当者の姿もなかった。どうしたのだろう――。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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