4月2日、米証券取引委員会(SEC)はソーシャルメディアを利用した重要なIR情報の発信を認めると発表した。
ただし、ソーシャルメディアを使った情報発信では、「各社はあらかじめ、投資家にどのソーシャルメディアを利用するのかを明らかにしておかなければならない」と釘をさしている。
この判断は、米インターネットテレビ・ネットワーク大手ネットフリックスの最高経営責任者(CEO)リード・ヘイスティングスが、昨年7月、自分のフェイスブック・ページにデジタル・ビデオの月次視聴が10億を超したとの未公開情報を書き込んだ件に関する調査報告書の中で明らかにされた。
今回、SECは「株主や投資家とのコミュニケーションにソーシャルメディアを利用する公開会社は増加している」と語り、「今日の市場におけるソーシャルメディア・チャンネルのもつ価値やその普及ぶりを高く評価し、各社のこうした新たなコミュニケーション方法の追求を支持する」と、ソーシャルメディアに対して大きく踏み込んだ姿勢を示した。
すでにパソコン大手デルや有力ネットオークションのイーベイといった米大手企業はツイッターを使って投資家向けの財務など重要情報を発表している。
また多くの企業が四半期決算をSECに届け出るときも、ソーシャルメディア経由でプレスリリースや届出情報を送信している。
しかし、これまでソーシャルメディアはその情報発信の効用は認められても、企業ウェブサイトや印刷冊子のアニュアルリポート、プレスリリースなど情報開示の配信チャンネルとしてSECから認知されていなかった。
ここでひとつ思い出しておきたい。それは、米国企業による自社の重要なIR情報の開示は、2000年10月に施行されたSECの公平開示規則が基本だという点だ。
それは、企業の重要情報はアナリストや機関投資家など特定の人たちに対する優先的な開示を禁止し、誰に対しても「同時に、同じ内容を、広範に」公開しなければならないとするものだ。
その後、SECは2000年代の急速なインターネットの進展を受け、2008年9月に企業ウェブサイト・ガイダンスを用意する。
これによって、1)自社のホームページが広く認知されていること、2)ホームページに容易にアクセスできること、3)アップロードされた情報に対し、投資家や市場に対応する十分な時間の余裕があること、などの基準に留意して運用すれば、自社のホームページで重要情報を開示できることになった。
今回のSECの判断は、ソーシャルメディアの利用を事前に周知すれば、ソーシャルメディアによる重要情報の開示は公平開示規則から見て問題ないとするものだ。
4月9日、全米IR協会(NIRI)は「これは公平開示規則の内容がもうひとつ進展したことを示すものだ。
そして、どのように情報を発信しても、公平開示規則を順守することが重要である」というメッセージを発表した。
2012年にスタンフォード大学とカンフェランス・ボードが北米企業180社あまりの経営幹部に行った調査によると、企業が株主とのコミュニケーションにソーシャルメディアを利用している企業は14.4%にとどまる。
他方、顧客とのやり取りでソーシャルメディアを利用したことのある企業は4分の3を超している。
それだけに、今回のSECの判断によって、株主向けのコミュニケーションでもソーシャルメディアの利用に拍車がかかるのは間違いない。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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