アドビシステムズは4月24日、電子書籍や電子カタログなど電子出版に関する取り組みや事例を紹介するイベント「Adobe Digital Publishing Forum 2013」を開催した。米Adobe Systemsのビジネス・デベロップメント シニアディレクターであるNick Bogaty氏がキーノートセッションを行い、「Adobe Digital Publishing Suite(DPS)」を使った出版事例、広告事例、企業の利用事例を紹介した。
Bogaty氏は「DPSが実現するインタラクティブでクリエイティビティのある出版物によってビジネスが大きく変化している」とデジタル出版物がビジネスとして動き始めていることをアピールした。
Bogaty氏は、DPS経由の出版物が米国、欧州、アジアと世界各国で出版されている事実を紹介。「今日紹介するデータは、初めて公開するものだが、週に200万の雑誌が出版されている」ことを明らかにした。
さらに有料購読者が増えている事実も明らかにした。
「読者のうち無料購読をしている人が22%いるが、単号だけ購入するという人が10%、定期購読をしている人が34%、紙の出版物を定期購読しているので、それとセットでデジタル版を手に入れているという人が35%となっている。インタラクティブなデジタル雑誌はニッチな市場から大きな数へと移行しようとしている。デジタル出版物はどの程度普及しているのか? という質問をよく受けるが、電子雑誌を見ている人の数は最近になって急成長している。利用者数の増加要因を調べたところ、iPad miniの登場に合わせて利用者が急増していることが明らかになった」
アドビが提供するDPSは、クリエイティビティを実現するツールであるが、マーケティング活動を強化し、ビジネスにプラスに働く機能を複数持ったツールであることも強調した。
「デジタル出版物を美しく見せるためのツールだと言われているが、それとともにマーケティングツールでもある。紙の出版物は書店で手にとって確認した上で購入できるが、これまでのデジタル出版物は実物を見ずに商品を購入しなければならなかった。われわれが提供するDPSは、初号は無償で提供し、それを見た上で定期購読するのか決定するというサイクルを提供した。それによって自分の目で商品を確かめた上で製品購入を決定できるようになり、読者は自然な形でコンテンツを購入できるようになった」
対応端末についても、iPadへの対応から始まり、iPhoneに対応するにあたっては「社内からも、画面が小さいiPhoneには提供の必要はないのでは? という声もあった」という。
しかし、実際にiPhoneに対応するとデジタル出版物を購入する読者の数は明らかに増えた。この経験から「対応端末の拡大は市場を大きくすることにつながる」と断言。現在はPCのブラウザのほかにiPadやiPhone、iPod touch、Amazon Kindle FireHD、Androidタブレットに対応しているが、2013年中にAndroidスマートフォン、Windows 8にも対応する。
インタラクティブなデジタル雑誌を購読する時間、閲覧回数の調査でも「イギリスのTop Gear Magazineでは、インタラクティブなデジタル雑誌を出したところ、1回あたりの購読時間が増加し、もう一度見る回数も増加していることがわかった。1人あたり400%増と4倍の時間となっている」という。
デジタル雑誌の滞在時間が増加している要因としては、紙の雑誌や通常のウェブサイトにはないクリエイティビティが大きく影響している。「BULLETT」というファッション誌では、小規模な出版社ながら、自分で誌面を触っていくと誌面が次々に変化する仕掛けを作っている。静止画と動画を組み合わせたコンテンツが提供され、中には広告から直接販売サイトにつながり、その場で購入までできる広告も登場している。
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