モバイル決済には場所を譲ってもらおう。近距離無線通信(NFC)は自らが役に立つ別の方法を見つけつつある。
実際のところ、携帯電話を使って商品の支払いをするというのは、現在ではNFCの利用法としては最も一般的でないように思える。少なくともInternational Consumer Electronics Show(CES)で発表されたガジェットを見た限りではそうだった。むしろCESで登場したNFC対応製品のうち、実質的にすべてのものが、次の2つの手段のうちの1つとしてこのテクノロジを採用していた。1つは、あるモバイルデバイスと別のガジェットの間で、ある種のデジタルな連携機能を設定する手段、もう1つは、タップしただけで製品間の情報共有を行う手段だ。
通信用チップメーカーのBroadcomで最高経営責任者(CEO)を務めるScott McGregor氏は、CESで米CNETに次のように語った。「NFCは間違いなく物事を簡単にする。ほとんどの先端テクノロジは、使いやすくなければすたれてしまう。NFCは、消費者製品のユーザーインターフェースを簡略化する上で、非常に重要な役割を担っている」
NFCはNear Field Communication(近距離無線通信)の略で、デバイス同士が少量のデータを転送し合うことを可能にするチップテクノロジだ。両方のデバイスがNFCチップを搭載している必要があり、接続するには1インチ(約2.5cm)以内に近づける必要がある。一般的にNFCは、2台のデバイスをタップし合うことによって、クレジットカードデータや、電車の切符、クーポン、プレスリリースといったデータを安全に交換できる。
NFCは長い間、モバイル決済、つまり携帯電話を店のレジスターの前でかざして商品を購入するというアイデアを現実により近づけるテクノロジとしてもてはやされてきた。しかし、モバイル決済の流行はなかなか軌道に乗らず、採用に向けて数多くのハードルに直面し続けている。技術的な問題は大部分が解消されているものの、米国においてNFCを備えている小売店やPOS端末は、NFCが広く普及するほど多くはない。
しかしCESでは、NFCは想像しうるほとんどすべてのもの(レジスターにはなかったが)に登場していた。スマートフォンのような一般的なデバイスに加えて、スピーカーやカメラ、テレビ、冷蔵庫、名刺、ほかにも数多くの製品で使われていた。パナソニックなど一部の企業は、NFCを炊飯器などの家電製品にまで追加していた。
NFCは、スマートフォンでは見慣れた機能になりつつある。モバイル決済はともかくとして、多くの携帯電話ベンダーはNFCテクノロジを、自社製品をライバル製品、とりわけ「iPhone」と差別化する方法として用いてきた。AppleはNFCを採用しない企業として最も有名だ。ただし、将来のデバイスにはNFCテクノロジを搭載するだろうというのが大方の予想である。
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