ソフトバンクが買収したSprintとはどんな企業か--鈴木淳也の見方 - (page 5)

プリペイド専門キャリアのゆくえ

 代表的なのはMetroPCS、Cricket Wireless(Leap Wireless)といった業界5位や6位のキャリアに加え、現在はSprint傘下に入っているプリペイドキャリアの数々だ。これらキャリアはRadio Shackや大量販店での端末取り扱いだけでなく、キャリア店舗をわざわざヒスパニックや治安の悪い貧困地域に構えたりと、明確に低所得層をターゲットとしていることがわかる。ある意味、米国でいま最もホットな市場ともいえる。

 米国では長らく音声通話が主役だったこともあり、料金体系が音声通話に極端に偏ったものとなっている。例えばAT&Tの場合、無料音声通話を含む基本料金が40ドルに対し、データ通信料金が25~30ドルと、音声通話の料金比率が高い。一昔前であれば、フィーチャーフォンのデータ通信料金が15ドル、初代iPhoneのデータ通信料金が20ドルと、音声通話基本料の半分に満たないほどだ。

 とはいえ最近では状況が変わりつつあり、この40ドルの基本料金で付与される1月あたり400分の通話時間も使い切れないケースが増え、携帯キャリアは従量制の「SMS」「データ通信」料金で稼ぐ傾向がある。最近ではさらにiPadやモバイルルータのようにデータ通信契約のみの端末が増えたこともあり、よりその傾向が顕著になりつつある。昨今のスマートフォンブームは願ったり叶ったりの状況で、なるべくユーザーにデータ通信を消費させて高ARPUへ誘導している。

 そして「2台目、3台目需要の喚起」だが、ただでさえ高価なポストペイド契約を1人のユーザーが何個も維持するのは大きな負担だ。筆者はAndroidとiPhoneでAT&Tに2回線を契約しているが、毎月の支払い額は平均で税込み180ドルくらいとなっている。仕事で使うのでなければ、すぐにでも1台に契約を減らしたいのが正直なところだ。そんな中、最近になりVerizon WirelessとAT&Tが打ち出した施策に「1契約でデータ通信の総容量を複数端末で共有できる」というサービスがある。

 これは例えば、あるユーザーが月間5GBのデータ通信契約を50ドルで行い、それを5台の端末で共有する場合、それらの端末の月間の通信量合計が5GB内で収まれば50ドルの支払いで済むというものだ。1人で複数台所有してもいいし、家族で1契約複数端末という形態でもいい。平均的なデータ消費量であればお得というわけだ。とはいえ、端末ごとの基本料金は発生するため、端末台数が増えることで最大3割程度の削減が可能ということに過ぎないが、普及台数を増やす効果は期待できるだろう。

 まだ表立って行動するキャリアは少ないが、今後「2台目、3台目需要の喚起」として注目されそうなのが「プリペイドサービス」と「MVNO」の活用だ。料金設定の自由度が高く、さらに比較的安価に設定されるケースが多く、すでに携帯電話を所持しているユーザーが2台目、3台目として新たな端末を所持するモチベーションになる。

 Sprintでは傘下にプリペイドかつMVNOのキャリアを複数抱えており、それぞれにユニークなサービスや端末を展開して人気を博している。最近ではSprintとClearwireのインフラを使って「月に500MB無料」のユニークなMVNOサービスをスタートさせたFreedomPopのようなユニークなキャリアもあり、今後これらの活用が台風の目として注目されることになるかもしれない。「実質維持費○円」のような形で契約数を増やす日本方式もいいが、新しい需要喚起やサービス開発という点では、このSprintとClearwireの今後のインフラ活用に期待したい。

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