KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、10月17日に開かれたauの2012年冬モデル発表会で、同社との競争が激化しているソフトバンクとの戦略の違いや、Sprint Nextel買収の影響などについて語った。
KDDIとソフトバンクは「iPhone 5」の発売にあたり、機能やサービス、LTEの通信エリア、基地局数など、さまざまな面でアピール合戦を繰り広げた。また、ソフトバンクは10月15日に、米携帯電話事業者のSprint Nextelを買収したことを発表。代表の孫正義氏は「世界3位の携帯電話事業者が誕生した」と語り、国内3キャリアでは連結売上高、ユーザー数ともにトップになったと強調していた。
こういったソフトバンクの動きに対して田中氏は以下のように語った。
「ソフトバンクにどのような思いでいるかということだが、拡大するということは企業にとって重要だと思うが、私自身は、自分たちがどうするかということではなく、顧客がどう考えているかを非常に大事にしたいと思っている。本当に顧客が望んでいるものは何かということに会社のリソースを投入しないといけない。そして、これからはLTEという新しい世界に投資しないといけない。
LTEのネットワークが本当にスピーディで使いやすく、電池もあまり減らないといった、そういうところに企業はもっともっと集中していくべきだ。私は顧客から気持ちが離れると、企業はどこにいくか分からないという考えを持っている。ソフトバンクにも考えがあると思うが、当社はそういう思いで会社を続けていきたいし、オペレーションしていきたいと思う。(ソフトバンクが)派手なのはいいと思うが、(自身は)性格が地味なのでそんなふうにやりたい」(田中氏)
また田中氏は、発表会後の囲み取材でもソフトバンクについて言及した。
今日本当に申し上げたかったのは、数はいくらでもつくれるということ。(ネットワークは)やはり質だろうと思っていて、数で比較するのはちょっと違うんじゃないのかと。僕らが求めている顧客のウォンツというものに対して、あえて数の比較ではなく質で訴求したい。
気になるというかタイプが違う。私はやはり真摯にやっていきたい。顧客目線でやっていかないと企業は存続できないし、顧客に対しても毎月料金をいただいていることに対してお返しできないと思っている。社員に対しても「そういう思いでいろ」と日々指導している。
(ソフトバンクが買収した)Sprintもそうだったが、もう1年も前から証券会社が常に持ち込む企業リストに入っていた。僕がどう思っていたかというと、自分たちは一体何なんだろうと常に思い返していて、このディール(取引)についてはお断りしていたのが現実。
我々もバカじゃないのでいろいろなことを分析しているが、(Sprint買収による)直接的な効果はあまりないと思っている。Sprintはどちらかというと我々と通信方式が同じでソフトバンクとは方式が違う。周波数帯も日本とは違う。
じゃあ、両社を足して(端末を)たくさん買うという話になるが、どれだけたくさん買うかによって決まるのかというと実はそうでもなくて、十分すぎるほど各社も買っている。どちらかというと、もうネットワークやデバイスの時代じゃなくてトータルでこうしていくんだという、顧客に対して何を価値として提供するのかが非常に重要だと思っている。
確かに、ああいうニュースがあると皆さんは非常にトピックにあげると思うが、あと数週間経つとまた別の話題になっているのではと思う。やはり企業の存在価値というのを大事にしないといけない。規模を狙うというのも1つの価値だと思うが、それはソフトバンクの考えであって、我々とは違うと本心から思う。
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