ソフトバンクは10月15日、米携帯電話事業者のSprint Nextelを買収することで合意したことを正式に発表した。Sprint Nextelの株式の70%を取得し、買収総額は1兆5709億円(約201億米ドル)におよぶ。
投資総額のうち約9469億円(121億米ドル)はSprintの株主に支払われ、約6240億円(80億米ドル)はSprintの財務体質の強化などに投じられる。両社は、2013年半ばに取引を最終的に完了すると見込んでいる。
ソフトバンクとSprint両社の取締役会で決議されており、幾つかの条件が提示されている。Sprint株主による株主総会における承認、競争法上の承認、連邦通信委員会による承認その他監督官庁の通常の承認、および表明、保証違反がないことなどだ。
ソフトバンクグループ代表の孫正義氏によると、ソフトバンクはいったんSprintの米国持ち株会社を買収し、新Sprintを設立。ソフトバンクが新Sprintの70%の株式を、残りの30%はSprintの既存株主が保有することになる。
新Sprint設立のために発行する新株の価格は、既存株主向けにはプレミアムが付いた7.3ドル、新規の株主は5.25ドルとなっている。資金は手元資金と借り入れで調達しており、現状のソフトバンク株を用いた新株発行や転換社債などのエクイティファイナンスは行わない。「現金で実施する」としており、株式の希薄化は発生しないという。新Sprintは旧Sprintの完全親会社となり、旧Sprintを継承する形でニューヨーク証券取引所に上場し、米国における上場会社になる。
来日したSprintのDaniel R. Hesse氏は発表会の壇上で、Sprintが米国の携帯電話市場で第3位で、ポストペイドでは3300万人のユーザー、プリペイドでは1500万人おり、売上高では340億ドルであることを伝えた。「AT&Tなどの競合企業には遅れを取っているものの、通信量収入成長率で1位、ARPU成長率も1位と大きな成長をしている企業だ」と成長性を強調した。
気になるSprintのブランド力だが、第3者機関による調査で「過去最高」だという。「米国事業者の中で唯一改善している」としている。実際に、契約者も2012年6月末で5640万人と過去最高水準の状況だ。
同取引のための資金は、ソフトバンクが持つ手元資金に加え、みずほコーポレート銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、ドイツ銀行東京支店からの融資で賄う。「引受を合意した新規のブリッジローンにより充当する予定」としている。
また、同社の主な財務アドバイザーはThe Raine Group LLCとみずほ証券で、資金調達にかかるMLA(マンデーテッド・リード・アレンジャー)はみずほコーポレート銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、ドイツ銀行東京支店だとしている。
買収後のソフトバンクのユーザー数は日米合わせて9600万人となり、NTTドコモやKDDIを大きく上回ることになる。ソフトバンクのグループとしての売上高は6.3兆円になると見込む。孫社長は「日本ではなく世界で3位の企業になるのだ」と強調した。
なお、 Hesse氏はSprint買収後も、引続き同社の経営に関与していくとしている。
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