組織に潜む厄介なリーダー - (page 4)

エグゼクティブブックサマリー2012年08月22日 10時00分

1. 成功する精神病質者

 精神的に不安定なリーダーと一口に言っても、程度があります。正常から異常まで、細かく精神健康度によって分けられます。例えば、軽い精神病質の人もいれば、慢性の精神病質の人もいます。その程度に関係なく、精神病質を持っている人は、仕事で成功する傾向にあります。彼らの大胆な行動や興味を引き付けるやり方は、魅力的に思えます。しかし、仕事のストレスやプレッシャーによって、破壊的な行動を取るようになります。

 人事担当者は、重役の候補者の経歴をきちんと調査するべきです。多くの場合、精神病質の傾向のある人は、例えば警察などの行政機関と過去に問題を起こしたことがあります。また、候補者の前の同業組合は、彼らの悪質な振舞いについて積極的に話し合ってくれる場合があります。もし、重役の候補者には精神病質の傾向があるのではないかと疑いを持ったら、素性と経歴を完全に調べ上げて下さい。

 人は誰しも程度こそあれ、日々の体調は心の持ち方にも影響を与えるものです。しかし、そのずれが、あまりにも過剰な場合、病理的疾患の対象となることも十分考えられます。このようなケースに該当するリーダーは会社にとって大きな利益を生むという優れた能力を持っている反面、達成に至るまで多くの余波があり、組織の人々にとって痛手を蒙ることも否めません。蔓延する悪循環を徐々に断ち切るためにも本人のプロフィールを多方面から調査してください。

2. 自分のことしか考えないナルシスト

 健全な人は、高い自尊心を持っています。しかし、うぬぼれは大きくなると不健全なものになります。ビジネスの世界では、ナルシストの傾向を持つリーダーは、企業によく尽くす傾向にあります。彼らは自信を強く持っているため、部下にとって良い刺激になる場合があります。このようなリーダーは「プラスのナルシスト」です。その他の心理的特徴や傾向と同じで、ナルシシズムにも程度があります。

 「マイナスのナルシスト」は、自分が一番重要な存在であると考え、その考えに従って行動する「不適応」な人物です。そのような人は、リーダーの地位を与えられると、あっと言う間に脱線してしまいます。しかし、適切な状況とナルシシズムを抑える環境の中にいれば、この心理的特徴を持つ人でもリーダーとして有効に働くことができます。その反対に、部下が環境に適応できなかったり、企業が権限を与えたりすると、ナルシストの傾向は強まります。そうなると、最悪の事態が生まれる場合があります。

 「性格の暗黒三要素」の中のナルシシズムは、2つに分類されます。1つは「マイナスのナルシスト」、もう1つは「プラスのナルシスト」、後者が好影響をもたらすことが良くわかります。最悪の事態を招くということにならないためにもナルシストの傾向や特性を知り、常に環境レベルから管理しておくことが重要だと言えます。

3. 無慈悲な策略的性格

 心理学者や社会科学者が「マキャベリズム」と呼ぶ「策略的性質」は、ホッブス的世界観を取り入れたものです。ホッブス的世界観とは、世の中は「食うか食われるかの世界」であり、そのため、成功したければ、ライバルの中で最もタフになり、最も皮肉屋で支配的で、こうかつで不誠実で、搾取的にならなければならないという考えです。多少の策略的性格を持つことは、若いリーダーが上に行くために役に立つでしょう。

 策略的性格の特徴である負けず嫌いな性格は、情け容赦ないビジネスの世界では通常、有効に働きます。また、策略的性質を持つ人は、自分の身を守る術や集中力、強さを持っていることで称賛されることがあるかもしれません。このような自己中心的な性格型は、問題のある性格型を巧妙に覆い隠してくれる場合がよくあります。

 しかし、完全な策略的性格は、まったく魅力的ではありません。完全に策略的な人間は、言葉巧みに部下をごまかし、コントロールしようとします。不正を働き、ウソをつきます。彼らの信念体系は、単純に、非道徳的な行動につながります。

 このような策略的なリーダーの部下は、リーダーを尊敬するのではなく、恐れるようになります。ダーウィンの進化論のような性質を持っていることから、健全な策略的性格を持ったリーダーは通常、脱線しません。しかし、反対に、環境に適応できない策略的リーダーは、あっと言う間に脱線してしまう恐れがあります。

 物事を進めるにあたり、駆け引きをすることは、日常茶飯事です。企業間交渉の場合は勿論のこと組織内の上下関係においても意見交換の際、無意識のうちにそれは行われていることがあるでしょう。ここで大事なことは、リーダーがそのやりとりに道義的ラインを引いているかどうかにあると思います。

 ここを押さえない限り、リーダーとしての尊厳を失うと最悪の事態が生まれます。この策は地に足をつけた全うなものであるか、部下に対する敬意は損なわれていないかなど、リーダーは常に念頭において行動を起こしてください。

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