WWDC解説:松村太郎が読み解くWWDC--4つのキーワード(後編)

 米国西海岸時間6月11日午前10時より行われた年次開発者イベント「WWDC 2012」において、Appleは新世代の製品群を披露した。AppleはiPhone以降、社名から「コンピュータ」を取り除き、革新の中心をスマートフォンやタブレットなどのiOSデバイスへと移行させてきた。しかし、今回の講演の3分の2はMacに割かれており、Macは依然としてAppleが提供するコンピュータ体験の重要な部分を担う製品であるということだ。

 前編では、2つのキーワードとして「1:歩調を合わせるMacとiOS=プロダクトの進化サイクルが顕在化」「2:大きく変わるMacの基準=新世代MacBook Pro」をお伝えした。

3:モバイルtoオフライン=生活革新に取り組み始めたiOS 6

 Appleが擁する2つのOSプラットホームの一躍をに担って余りある存在となったiOSは、2012年秋に第6世代となるiOS 6へとアップデートする予定だ。iPhone、iPad、iPod touch、そしてApple TV等のプロダクトで利用されているiOSの最新バージョンは、生活革新への取り組みをより色濃くにじませる。その中から3つのキーワードを紹介しよう。

「アイズ・フリー(eyes free)」

 まず始めはSiriの進化だ。それを象徴する印象的なキーワードは、「アイズ・フリー(eyes free)」である。

 これまで「ハンズ・フリー(hands free)」という言葉は親しまれてきた。手を使わずに電話をかけたり受けたり、簡単なボイスコマンドで機能を呼び出したりする意味で使われてきた。しかし手を使わずに機能を呼び出しても、情報をチェックするには目を使って来たため、運転中やジョギング中などにこれらの情報を確認することはできなかった。

 新しいiOS 6のSiriでは、目を使わずに発見した情報をチェックできるというコンセプトになる。例えばレストラン検索やスポーツのゲームスコアの確認、アプリの立ち上げ、TwitterやFacebookへの投稿を行うこともできるようになった。

 Siriでも利用されている音声認識はOS X 10.8 Mountain Lionでも提供され、iOS同様、通知センターからTwitterに声で投稿する、といった操作が可能で、声によるアイズ・フリー体験は今後のAppleデバイスに拡がっていくことが考えられる。例えば、噂の絶えないApple TVは、自分の声がリモコンになることも、想像に容易できる。

Facebookの対応

 iOS 6の2つ目の生活に直結するポイントは、Facebookの対応だ。

 日本ではFacebookはまだまだ発展途上であるが、9億人を越えるユーザーを世界中から集め、米国や中南米を始めとする各国でFacebookは生活コミュニケーションのインフラに近い存在となっている。iOS 6がOSレベルでFacebookをサポートすることは、iPhoneやiPadの利便性を高める大きな布石となる。

 基本的な体験はTwitterに近い。写真やリンクなどを「共有」ボタンからすぐにFacebookに投稿できるほか、新しい通知センターでは、Facebookへ投稿するボタンが用意され、アプリを立ち上げることなく情報がシェアできるようになった。

 また、Twitterより重要なポジションを占めるのが電話帳連携の機能だ。Facebook上の友人の情報が更新されると、電話帳上の情報も更新され最新の状態に保つことができる。Facebookでは学校や勤務先が変わっても連絡を取り続けることができるが、そのつながり続ける便利さをiPhone上の電話やSMS、メールでも体験できるようになる点は非常に大きい。また友人の誕生日やFacebookイベントがiPhone標準のカレンダーアプリで表示される点も便利そうだ。

 もう1点、iOS 6とFacebookで触れるべきは、iTunes Store、App StoreなどのStoreのFacebook共有の対応。iOSの各種ストアとiTunesでは今後、アプリや映画、楽曲などの共有について、独自のソーシャルプラットホームPingからFacebookやTwitterへ移行していくだろう。これはAppleにとってはPingの失敗を認める結果となるが、賢明な判断であると思う。

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