この仕組みとPassbookを合わせて考えてみると、Apple IDと各種サービス事業者のIDが認証キーとしてひもづけられ、Apple IDを介した決済によって航空チケットやプリペイドカード、ギフトなどが送れるようになるとすれば、Apple IDはいつの間にか、生活に根ざした決済手段とデータの蓄積が可能になり、これらのデータをAppleが握ることになる。
GoogleやFacebookにも、広告ビジネスに加えてコンテンツ課金などの決済手段がすでに整備されている。しかしこれらのサービスが生活に根ざした手段になっているか、といわれるとそうではない。GoogleやFacebookのポイントで、全米のスタバのコーヒーは買えないのだ。しかしPassbookのプリペイドカードならiOS 6が提供され次第可能になる。
AppleはiOSデバイスとApple IDを生活の中でより活用できるようにし、AppleデバイスやApple IDへのロイヤリティをさらに高める戦略を目指していくのではないだろうか。
もちろんこれらのサービスの多くは米国から先行してスタートすることになるはずだ。しかしApple IDのビジネスの本丸は、中国やインドなどのアジア圏であることは間違いないだろう。iOS 6やMountain Lionでは、中国語対応を拡充したり、中国のウェブサービスやSNSへの対応を強めており、Appleのプラットホームが中国市場へのより深い展開に舵を切り始めた点は印象的だ。
大規模なユーザーベースが見込める国での決済手段の提供は、Apple IDにとって非常に魅力的なインフラになり得る。
これまで、4つのポイントに分けてWWDC2012から見えてきたAppleの戦略について触れてきた。
そしてこの原稿はMacBook Pro with Retina displayで書いているが、紹介してきたビジネス的な戦略に加えて、Retinaディスプレイやデバイスの設計・デザインに関しての「クオリティ」という強みをAppleは保持し続けている。人々に直感的な魅力で訴えかけながら、じわりじわりと、そして確実に新しい便利さや価値を体験させる。
Appleはライフスタイル・デザイン企業としても、注目すべき存在になっている。
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