WWDC2012最後のキーワードは、Apple ID、つまりプラットホーマーとしてのAppleだ。コンシューマー向けサービスでプラットホーマーと呼べるコンペティターはGoogle、Facebook、Microsoft、そしてAmazonなどがある。Googleとはスマートフォン・タブレットのOSプラットホームで、Facebookとはコミュニケーションサービスやソーシャル分野において、MicrosoftはOS、そしてAmazonは音楽や書籍の販売・配信の分野でそれぞれ競合している。
しかしAppleは全てを競合として扱うだけでなく、競合する企業とは協力関係を結んでいる。たとえば iOS 6 やMountain LionでサポートするFacebookでは、Appleが持っていない友達とのつながりの情報を電話帳やスケジュールに生かしたり、App Store、iTunes Store上のアイテムをソーシャルに共有するプラットホームとして活用しようとしている。
一方で、自社のOSの上でほかのプラットホームがビジネスをしようとする点は徹底的に排除し始めている様子も見受けられる。例えばこれまでiOSの地図アプリではGoogleマップを利用して位置情報の表示や経路検索などを実現してきたが、iOS 6ではApple独自の地図による表示を実現している。
これは位置情報に連動したGoogleマップ上の広告などから、Appleがこれから始める位置情報と連動したPassbook関連の機能との競合を避けるため、と考えられる。FacebookやTwitterがOSレベルで組み込まれるのは、これらの企業がiOS上で直接的に彼らの広告をはじめとしたビジネスを展開しにくい状態にあるからであり、それはそれでTwitter、Facebookのモバイル版における収益性の確保といった別の問題を浮き彫りにしている。
Appleをプラットホーマーとしてみたときに最も重要なのはApple IDである。Apple IDはこれまで、iTunes StoreやApp Storeのアカウントとして利用することができるIDであり、コンテンツを購入するために用いられる2億件以上のクレジットカード情報がひもづけられている環境だ。つまりこれらのユーザーに対してカードを介して課金することができることを意味している。このことは、NFCの普及を待つ必要がなく、決済系を握っているAppleの強みといえる。
ここで1つ、近い将来について考えてみる。例えば、Apple IDが生活一般的な購買に活用できたらどうなるだろう。
サンフランシスコにあるApple Storeからスタートし、全米、そして日本のストアでも利用可能になったEasy Payというサービスは、Apple IDでログインしたiPhone上のApple Storeアプリからバーコードリーダを起動し、リアル店舗の中にある商品のバーコードを読み取らせると、Apple IDにひも付いたカードから決済を済ませて、店員を見つけなくても商品を購入して持って帰れる仕組みだ。
まだ慣れないその購買スタイルはいわゆる「万引き」に近い感覚で気が引けるが、リアルな店頭でApple IDを使った決済で商品を購買し、その購買履歴やレシートがアカウントに蓄積される仕組みがすでに動き始めている。
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