「Microsoft Office」に挑む「Google Drive」--ユーザーデータが勝敗の鍵 - (page 2)

Rafe Needleman (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2012年05月14日 07時30分

 一方、Microsoftの主力製品は、データではなくソフトウェアだ(そして同社の顧客は広告主ではなく、ソフトウェアを購入する人々だ)。では、MicrosoftのモデルとGoogleのモデルが共存できないのはなぜだろうか。MicrosoftのソフトウェアスイートはアプリケーションソフトウェアとOSから構成されており、このOSはユーザーデータを保管するが、Googleが求めるのはこのデータだからだ。そのため、Googleはその機能をGoogle Driveで間接的に攻撃しつつあるが、その方法は同期されたファイルシステムの提供にとどまらない(それならMicrosoftも提供している)。いったん自分のデータをGoogle Driveに保存したユーザーは、そうしたファイルをMicrosoft以外のアプリで開くのがどれだけ簡単かということにも気付くだろう。これが、GoogleがGoogle Driveを、開発者向けAPIや一連のパートナー製品とともに公開している理由の1つだ。そうしたAPIやパートナー製品は同時に、Microsoftの顧客を少しずつ削り取ってもいる。

 サードパーティーの開発者がGoogle Driveで使っている機能で最も重要なものの1つが、「Open with」機能だ。例えば、「Microsoft Project」のファイルをGoogle Driveにアップロードした場合、そのファイルをウェブアプリの「SmartSheet」を使ってウェブ上で直接開くことができる。同じように、「SlideRocket」のようなウェブアプリで「PowerPoint」ファイルを開くことができる。Google独自の生産性アプリでもMicrosoftのファイルを開くことが可能だ。

 Google Drive発表以前に作成したファイルのアーカイブに、Officeがなくてもアクセスできると気付く人が増えれば、そうした人々がGoogle Drive(または同じようなパートナーがいるならば、競合製品かもしれない)をメインのストレージとして検討する可能性も高くなる。かくしてGoogleが勝利を収め、Microsoftが敗北を喫することになる。

 MicrosoftはGoogleの参加による市場の侵食にどうすれば対抗できるだろうか。同社には独自のクラウドストレージ製品と、開発者との強いつながりの歴史がある。また、同社は企業顧客を抱えている。しかし、Google Driveの開発者で、Microsoftとも長年取引してきた人物に話を聞いたところ、Microsoftはまだ対抗できる場所にはいないという。Microsoftには「SkyDrive」と「Office 365」に集中型ストレージがあるが、開発者がMicrosoftのクラウドとの統合に必要とするインフラストラクチャ、特にユーザー認証やサインオンのツールはない。

 Microsoftは、Officeのソフトウェアライセンスによる売り上げも守る必要がある。ビジネスソフトウェア分野では新興企業であるGoogleにとっては、ソフトウェアの売り上げは検索や広告ビジネスに上乗せされるものであるため、同社はMicrosoftより低い価格で販売できる。

 ほかの企業は、データを支配する者が市場を支配するということに気付いている。例えば、Boxは「OneCloud」を発表したところだ。これを使えば、ドキュメントをさまざまなアプリで開くことができる。ただし、今のところモバイル版のみの提供だ。

 PCの時代は過ぎ去った。そのため、ビジネスの世界はMicrosoftのものではない。人々は自分のコンピュータやウェブ上、モバイルデバイス上で仕事をする。そして、自分がどんなハードウェアを使っていても、そこで仕事ができることを期待している。大手のテクノロジ企業はすべてこれを理解している。しかし、この変化を先取りできる製品やインフラストラクチャ、あるいは自由を持つ企業はごくわずかだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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