「Google Chrome」は今から12カ月以内に、10年以上にわたって頂点に君臨したMicrosoftの「Internet Explorer」(IE)を抜いて、世界で最も使用されているブラウザになるだろう。
この事実はFacebookを震え上がらせるに違いない。
Statcounterによると、2008年7月の時点でIEは68.5%の市場シェアを誇っていたという。Chromeはそのとき、市場に投入されてさえいなかった。今日、IEのシェアは34.8%まで低下したが、Chromeはブラウザ利用全体の30.9%のシェアを獲得するまでになった。この数カ月で、Chromeはシェアを1%伸ばし、IEのシェアは約1%縮小している。
Googleがブラウザ市場を制圧するのは時間の問題だ。
ここまで読んで、なぜFacebookがブラウザ市場の行方について気にする必要があるのかと疑問に思う人もいるかもしれない。Facebookはソーシャルネットワークであり、デスクトップソフトウェア企業ではない。ブラウザのシェア争いがどうして関係するのか。
その答えは、Googleが「Google+」に関して抱いている野心的な計画の中にある。Google+は同社の「ソーシャルの背骨」だ。FacebookとGoogleが交戦状態にあること、そして、GoogleがFacebookを出し抜きたいと考えていることはよく知られている。そこに賭けられているのは、ウェブを掌握すること(ならびに莫大な広告収入を得ること)にほかならない。
ただし、単独の製品としてのGoogle+は今のところ、Facebookの成長に歯止めをかけるには至っていない。Google+には1億7000万人以上のユーザーがいるかもしれないが、Facebookは10年に1度といわれる規模の新規株式公開(IPO)に向かって順調に進んでいる。
しかし、Google+はスタンドアロン製品として設計されたものではない。Googleの全製品を補強し、一体化するために作られたものだ。Googleは「ボルトロン」(米国のテレビアニメに登場する合体ロボット)になりたがっている。それぞれのパーツ(「Gmail」やChrome、「Android」「Google Search」など)は単体でも強力だが、合体させれば無敵になる。Googleが「Search, plus Your World」の提供を開始したのはそのためだ。そして、Google+のChromeへの統合が必然なのも同じ理由である。
少し考えてみてほしい。Googleはたった1回のアップデートでChromeを「RockMelt」の同社版に変えてしまうことができる。そのソーシャルブラウザは、ユーザーがアドレスバーにFacebook.comと入力するより前に、Google+を目の前に表示させるだろう。
Googleがそんなことをするとは思わないかもしれない。だが、同社はGoogle+をChromeに統合する拡張機能を既にリリースし始めている。これらの拡張機能は、最終的なChromeへの統合の前触れにすぎないのではないかと筆者は考える。
Facebookは現時点ではウェブ界の王者かもしれないが、ユーザーはウェブにアクセスする際にまずブラウザという入り口を通過しなければならない。Facebookとしては、Facebookユーザーの30.9%がサイトへのアクセス方法をGoogleによって制御されることを、受け入れるわけにはいかない。Facebookの同盟企業(および投資者)のMicrosoftがブラウザ戦争で行き詰まりを見せていることを考えると、特にそうだ。
FacebookとIEを統合することでChromeに反撃を試みることもできるものの、それでは形勢を一変させて、Googleを守勢に立たせるほどの動きにはならないだろう。FacebookがGoogleに徹底的な打撃を与える唯一の方法は、独自のブラウザを開発し、Facebookの圧倒的なユーザー数を生かしてその普及を促進することだ。
ウェブの覇権を賭けた次なる争いは、ブラウザレベルで繰り広げられる。唯一の問題は、手遅れになる前にFacebookが参戦するかどうかだけだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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