世界最大の写真共有サイト(そしてソーシャルネットワーク)であるFacebookは米国時間4月9日、Instagramを買収すると発表した。Instagramは、非常に高い人気を誇るスマートフォン向けモバイル写真共有アプリを提供している企業だ。この買収を早速評価して、Facebookにとって非常に強力な戦術的かつ戦略的な動きであるとする分析もある。
この件でFacebookが勝ち取った重要なものは、モバイルとのかかわりだ。Instagramのユーザー数は2年足らずの間に3000万人に達している。Facebookは数年前からモバイルアプリを提供しているが、Instagramほどはユーザーの愛着を勝ち得ていない。Facebookは、モバイルアプリの中で最高の相手(少なくともユーザー開拓という点においては)を買収することによって、将来の競争相手を排除するだけでなく、モバイル分野での存在感を強化できる。
Instagramは小さな企業かもしれないが、買収の日まではFacebookに対する脅威となっていた。Facebookは、1日あたり約2億5000万枚の写真がアップロードされる世界最大の写真共有サイトになったが、そのソーシャルネットワークのユーザーベースに頼って安心していたのでは、現在の地位を強化し続けることはできない。Facebookやそのほかのサービスとの共有機能を備えたInstagramのようなアプリは、アプリ独自のソーシャルネットワークユーザーを獲得する可能性を秘めている。Facebookは、同社サービスへのユーザー関与の深まりと、ユーザーに関するデータの蓄積によって成功を維持しているが、こうしたアプリユーザーは、Facebook以外の場所で写真共有のトラフィック(アップロードや意見交換、「Like(いいね!)」のようなソーシャルジェスチャー)を発生させる。
さらに、Instagramは動画共有についての構想もある。最高経営責任者(CEO)兼共同創設者のKevin Systrom氏はBusiness Insiderに対して、「Instagramは写真共有の会社だという固定観念を持たれるのを私は望んでいない。Instagramはメディア企業だ。われわれは視覚メディアを扱う企業だと考えている。私は自分たちのことを説明するとき、視覚メディアを通したコミュニケーションを可能にする、破壊的な力を持ったエンターテインメントプラットフォームだと言っている。写真だけがそうだとは考えていない」と述べた。
とはいえ、Instagramもまた、Facebookを必要としていた。Instagramは高い人気を誇ってはいたものの、売り上げを得るための戦略を発表するには至っていなかった。同アプリは無料で、広告は掲載されていない。しかし、大規模なメディアサービス(Instagramは間違いなく大規模である)の運営は、高コストの事業になることがある。
両社が発表したように、FacebookはInstagramを独立した製品として残すのかもしれないが、Instagramユーザーの生成するデータはFacebookのメカニズムに流れ込むようになると考えて間違いはないだろう。Instagramの写真に含まれる情報(時間と場所)は、Facebookで生成されるデータ(その写真の撮影時に誰と一緒にいたのか、その人物は友達なのか)と簡単に融合させることが可能であり、Facebookはさらに多くのターゲティング用ツールを手に入れることになるだろう。Instagramは現在、Facebookで写真を共有できる機能を提供しているが、Facebookからこうした中核的な情報を得ることはできない。
Facebookは、同社の広告プラットフォームのターゲティングを改善する必要が本当にあるのだろうか。おそらくないだろう。現状でも相当にうまくいっているのだから。しかし、Facebookが許せないのは、このレベルの情報が競合他社の手に渡ってしまうことなのだろう。FacebookはInstagramのユーザーを囲い込むことで、結果としてモバイル写真に関するソーシャル情報の極めて大きなシェアを得ることになる(と同社は期待している)。
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