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周波数オークションを考える(1)総務省編--電波有効利用と透明性確保

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 総務省による「周波数オークションに関する懇談会」が12月19日、実施に向けた道筋をつける形で終了した。これまでは無料(運用に際して電波利用料は徴収するが)で分け与えてきた周波数をお金で売り払うという事業の大転換、果たして制度として定着させることはできるのか。導入元の総務省、対象とされる通信事業者、懇談会メンバーの有識者にそれぞれ話を聞いた(全3回)。

 周波数オークション制度導入の主目的は「電波の有効利用推進および無線局免許手続きの透明性・迅速性確保」である。懇談会最終回直前に行われた行政刷新会議「提言型政策仕分け」において、「現在進行中の3.9Gから即時導入すべき」「収入は一般財源化すべき」と提言されてしまったことで勘違いされがちだが、国家財政への寄与が主目的でない(目的のひとつではあるが)ことをあらかじめ付記しておく。

 総務省総合通信基盤局電波部電波政策課の松田圭太氏によれば、政策仕分けの提言は重く受け止めつつも「スマートフォンの普及によって各キャリアともトラフィックが厳しい状態。これを是正するためには一刻も早く周波数を割り当てる必要がある」と、3.9Gからのオークション導入は明確に否定。その上で「主目的は財源ではなく、あくまで有効利用促進と透明性・迅速性確保」と付け加えた。

 また報告書には「当面は電気通信事業者用の移動通信システムを対象とすることが適当」と記載されており、お金を払って周波数を買い取る相手は通信キャリアのみに限定され、少なくとも放送事業者は対象外とされている印象を受ける。「それは誤解。防災行政無線のような公益目的で利用する無線システムはなじまないとされていますが、放送まで対象外としているわけではありません」(松田氏)

 これについてはパブリックコメントでも多数の指摘があったようで、修正後の報告書には「今後の通信・放送融合の進展等を踏まえ、放送など移動通信システム以外の(中略)将来的にオークションの対象とすることが適当」との一文が付け加えられた。ただし、現在検討中の制度は交付済み周波数の再免許時に適用されるものではなく、あくまで新規割り当てが対象。そもそも現行放送局が新規に周波数を獲得するケースが当面考えられないため、追加された文章は「通信キャリアへの申し訳程度」と考えてよさそうだ。

 制度導入にあたっては、資金力に勝る大手事業者による買い占めが起こらないよう安全弁が用意される見込み。そのひとつが、いわゆる「新規事業者枠」だ。大手事業者をオークションから締め出し、取得済み周波数の少ない事業者だけに競売参加を許すことで買い占めのリスクを回避する仕組みとなる。

 これを通信キャリアの現状にあてはめると、イー・アクセスのみ参加の許されるオークションが発生しそうだが「導入は4~5年先の話であり、現在の状況と変わっている可能性もある」(松田氏)。つまりはイー・アクセスが現在と異なり他の3事業者同等の周波数を確保しているケースもあれば、現行4事業者とは別の事業者が参入してきているケースも考えられる、ということ。なお、仮に入札資格事業者が1社しかなかった場合においても、最低落札価格設定などの対応でオークションは実施される見込みのようだ。

 では、この「新規枠」を大手事業者が悪用するケースにはどう対応するのか。報告書案ではオークションで獲得した周波数の二次取引について「現行の電波法制度でも認められている事業譲渡等に伴う地位の承継の範囲で」認めるとしている。つまり、適当な子会社を作って新規枠を落札、その後に子会社を計画倒産させて周波数を承継、という方法も可能となってくる。

 「事業承継には総務大臣の許可が必要であり、適切と認められなければ許可がおりません」(松田氏)とはいうが、システムとして抜け道があるのは事実。一方、二次取引自体を禁止してしまうと運用能力のない落札者による周波数の死蔵につながり、主目的たる「有効活用」を阻害してしまう。ここは大手通信事業者の良心に期待するしかないだろう。

 「懇談会の位置づけは大きな方向性の提言であり、現実に即した制度設計がなされていくのは次のフェーズ」(松田氏)。つまりは現状に当てはめて心配ごとを挙げるのは気が早いということ。オークション落札経費を利用者に転嫁されたらたまらない、とユーザーサイドが心配するのは現段階では早計と言えるかもしれない。

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