携帯電話番号の枯渇と周波数帯再編への課題--総務省の田原康生氏

 東京ビックサイトで行われた「ワイヤレスジャパン2011」では5月27日、次世代移動体通信技術に関するコンファレンス「LTE&4G移動通信技術フォーラム」が開催された。総務省の総合通信基盤局 電波部 移動通信課長である田原康生氏は、次世代通信の整備や周波数帯の確保など、総務省が現在取り組んでいる通信施策について講演した。

携帯電話番号の枯渇問題と通信トラフィック

  • 総務省の総合通信基盤局 電波部 移動通信課長の田原康生氏

 田原氏はまず、日本における移動通信サービスの現状について説明した。2011年4月末時点で、各社の契約数合計が日本の人口に近い1億2000万契約に達しているほか、今後機械同士の通信となる“M2M”の需要が大きく伸びるのではないかと見解を示した。

 一方で、問題となるのが電話番号だ。携帯電話に使われている090、080で始まる番号は残りが2000万弱しかなく、2014年には番号が枯渇する可能性がある。そこで現在、PHSに用いられている070の番号を携帯電話でも使えるようにし、PHSとの間で番号ポータビリティもできるようにするための議論を進めているという。またM2M向けの番号は、現在の携帯電話と同じでよいのかどうかという議論も、進めていくとしている。

 もう1つ、大きな問題となっているのが通信トラフィックで、2011年3月には、半年で47%、年率換算で118%と加速度的に通信トラフィックが増加しているという。急増の要因は、主にデータ通信の利用が大きいスマートフォンの増加。2010年は出荷台数が前年比3.7倍の伸びを示すなど需要が高まっており、今後携帯電話の半分くらいを占めるようになることから、トラフィックはさらに増えると田原氏は予測。それに対応するには新たな電波の確保や、電波の有効利用ができる方式の導入などが必要との考えを示した。

 その上で、各事業者はLTEやDC-HSDPAなど、より高速で電波利用効率の高い新しい通信方式の導入を進めていると説明。中でもLTEは、2011年5月時点でNTTドコモをはじめ14カ国20オペレーターが導入しているほか、今後80カ国208オペレーターが導入を検討していることから、日本の中でも力を入れていきたいとしている。

周波数帯獲得のオークション方式導入を検討

 続いて、モバイルWiMAXやXGPなどの広帯域移動無線アクセスシステム(BWA)について解説。こちらはすでにサービスを開始しており、ある程度時間が経過していることから、各社からは高度化に向けたさまざまな要求が出てくるようになってきたという。総務省でもそうした要求に対応するべく、2011年4月末に改正省令などを公布・施行して見直しを進めているとのことだ。

 さらに田原氏は、周波数帯の再編など新たな周波数の確保に関する話題にも言及。2015年に向けた周波数確保の基本方針において、“プラチナバンド”と呼ばれる700/900MHz帯の最大100MHz確保を始めとして、300MHz幅超の周波数を新たに確保する方針を示している。また2020年までには、3~4GHz帯を中心に1500MHz以上の周波数帯を確保する方針だという。

 中でも課題となっているのが、地上波デジタル放送への移行によって空きが生まれる700MHz帯と、携帯電話で利用している800MHz帯の再編によって空きが生まれる900MHz帯の扱いだと説明。さまざまな議論を繰り広げた結果、ラジオマイクやMCA無線など、既にこの周波数帯を利用しているシステムの周波数帯や配置を移動し、携帯電話で世界的に使われている形に合わせる方向で再編を進め、LTEなどに利用するとしている。

 ただ、既存のシステムの周波数帯を移動するには、手間と金がかかる。この負担をどう解消するかについても検討がなされ、新たにその周波数帯を利用する企業が計画申請をし、負担費用やスケジュールを比較審査した上で事業者を決定、費用を負担してもらうという形に電波法の制度を改正。5月26日に国会を通過したという。

 さらに今後、周波数帯獲得のオークション方式導入を検討するべく、懇談会を開催しているとのことで、2011年いっぱいをめどに内容を精査していくという。主な論点は、形として見えない電波を利用するためにお金を払う理由、オークションで得たお金の取り扱い、転売を認めるかどうか、落札価格の高騰により通信事業への負担がかかることをどう防止するかなどであるようだ。

 また今後というところで、第4世代移動通信システム(4G)に向けた取り組みについても説明がなされた。高速移動時でも100Mbps、低速移動時で1Gbpsを実現するという4Gは、従来モバイルに使われていなかった3GHz以上の周波数帯を使ってサービス実現するべく標準化を進行。LTEの発展形「LTE-Advanced」と、WiMAXの発展形「WirelessMAN-Advanced」の2つが提案されており、導入に向けた準備を進めているという。さらに4Gの先となる「Beyond 4G」についても、基礎研究の段階だが進めているとのことだ。

 最後に田原氏は、東日本大震災の被害を受け、安全性や継続性に関する取り組みの重要性についても触れた。震災では通信事業者のネットワークが大きな被害を受けたほか、輻輳で音声通話を中心に接続が難しい状況が続いた。阪神淡路大震災の時には433万人であった携帯電話利用者が、現在ではその27倍にも増えていることから、震災で浮き彫りとなった課題や、ネットワークのあり方について、各社から意見や技術を募って見直していく必要があると話している。

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