総務省の「周波数オークションに関する懇談会」の席上、独自の考えを持ってさまざまな提案を行っていた参加メンバーがいる。大阪大学・大阪学院大学名誉教授で情報経済研究所代表取締役所長の鬼木甫氏だ。鬼木氏の考える周波数オークション制度の正しい有り方とは。そして今後、制度設計はどのように進められていくべきなのか。12月19日、懇談会終了直後に話を聞いた。
内容の濃い、緊張感のある内容でした。プラチナバンド(700/900MHz帯)割り当て時におけるオークション適用をはじめ、私の意見がさっぱり通らずにフラストレーションがたまることもありましたが、主張したいことを公の場で主張できたことですっきりはしています。
世の中の大半は「ここから適用すべき」と考えているはず。それが通らない、政治とはそういうものです。部分の利益を反映して運営すると国の発展を阻害する。国民全体の利益を代表する形で動くようになってほしいと考えます。
電波を売った収益は国民全体の利益。仮にITC振興が重要であったとしても、それだけに利用することが適切とは思えません。別に総務省を批判したいわけではなく、物事の筋という話。国民ひとりひとりの銀行口座にオークション収益を振り込んで欲しいくらいですが、それが現実的でないのであれば一般財源化を求めるということです。
一般財源化は物事の筋道として申し上げていますが、それは結果であって目的ではない。正直、私自身も「財源ありき」の制度導入を求める考え方はいいとは思いません。私の主張する一般財源化の議論は、自らが管理している分野であげた収益を目的税化すべきではないということ。法人税を法人の補助金のために使うとか、土地の固定資産税を不動産事業振興に回すということが許されるべきではないのと同じ。仮にITC振興が重要と考えるのであれば、財務省をはじめ各省庁を説得して回って予算を確保すべき。ショートカットを考えるべきではないということです。
公共的な収入をどのようにして集めるか、これはどの方法が正しいとも言えません。オークション導入によって各キャリアがユーザー料金に落札経費を反映させる可能性もあるでしょうが、それでも国民は携帯電話を使うだろうと。その意味では国が「取りやすい」と考えるのはやむをえません。少なくとも借金でごまかすよりはいいかと思います。
導入理念はともかく、やはり財源確保に流れがちな傾向があります。市場価格の定まっていない当初段階では、不当に高い値段やとんでもなく安い値段がつくこともありえる。それが問題となるケースもありますね。日本では早期に落ち着くべき価格に落ち着いて欲しいと願います。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス