パナソニック モバイルコミュニケーションズは12月9日、海外における携帯電話端末事業に再参入すると発表した。まずは2012年3月に欧州市場で薄型防水のスマートフォンを投入する。事業者名など具体的な発表は、2012年1月初頭を予定しているという。
グローバルモデルとなる第一弾の端末は、狭額縁のQHD 4.3インチ大画面OLED(有機発光ダイオード)を搭載。防水・防塵設計で、薄さと軽さ、持ちやすさを追求したという“スリム Dシェイプ”デザインを特長とする。NFCにも対応。Android OSを搭載するが、OSのバージョンは未定だ。
今回の端末は、30代~40代のビジネスマンに向けて作り上げたもので、価格帯はミッドからミッドハイレンジを想定しているという。欧州マーケティングのキーコンセプトは「Smart has never been so beautiful!(こんなに美しいスマートフォンはなかった)」。開発にあたっては、ロンドン、ベルリン、ミラノ、パリ、マドリッドの欧州5都市にてグループインタビューを実施。商品コンセプトの徹底検証を行なったほか、ユーザーニーズの調査結果に基づいた製品で、欧州市場で高い評価が得られたという。
パナソニックでは、かつて1971年にクウェート向け自動車電話販売を開始。1998年には海外携帯の累計販売台数1000万台を突破した。2003年には年間販売台数890万台を記録していたが、2005年に海外携帯電話事業から撤退した。
2005年当時、デザインや仕様の要求が国内外で大きく異なり、国内市場への開発リソースの集中を決断したという。スマートフォンが主流となる現在は、「求められる商品もほぼ同じ。機は熟した。日本そのものがガラパゴスのマーケットからグローバルに変化しているという現実があり、もはや日本だけで携帯ビジネスは困難。日本もグローバル市場のひとつという認識を持っている」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長の星敏典氏)
新たな事業戦略として(1)経営リソースをスマートフォンに集中、(2)グローバル視点での商品企画推進、(3)海外市場に打って出る──の3つを掲げる。軽薄短小技術とAV技術、ブランド力、グループ全体のビジネスインフラを強みとし、高付加価値のスマートフォンを海外市場へ投入する。
欧州を選んだのは、同社が2005年まで欧州で事業していたからだという。「通信事業者とのコネクションがまだ生かせる地域。新たなビジネスインフラを構築するのはコストがかかるが、(欧州本社がドイツにあるなど)欧州では販売推進できるインフラが構築しやすかった。逆にいうと全面展開は規模的にも難しいので、地域で選定していった」(星氏)。
欧州を足掛かりにグローバル展開を進め、2012年度中にはラインアップを拡大。欧州でスマートフォン150万台の販売を目指す。第2フェーズとして中国、米州など他地域に向けて展開し、第3フェーズとして新興国市場へと拡大予定だ。2015年度には欧州・アジア・中国・米州で900万台、日本国内600万台(内、スマートフォン500万台)と合わせて1500万台の販売を目指す。
日本国内においてもスマートフォンの開発に出遅れたパナソニックだが、「最大の理由はこれだけ急速にスマートフォンが普及するとは市場を見誤った」と説明する。同社が目指す1500万台という数字も、グローバルで見れば「(他社の)シェアを奪うという規模になっていない」(星氏)。
一方で、同社は今をチャンスとも捉える。「かつてのように上位5社でシェア90%を占めるところからシェアが変動している。変動する時代には、われわれが参入していっても可能性はあると信じている。お客様に認めていただける特色のある尖ったものを提供していきたい。さらには、パナソニックならではという機能を実現し、グローバルで戦っていく」と語った。
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