iPadの「不気味の谷」が深刻化しつつある理由

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 編集部2025年06月22日 08時03分

 私にとって、iPadがますますMacに近づいているのは最高に嬉しいことだ。だが、本当はこの2つは完全に一つになるべきだ──。

 「コンピューターとは何だろう?」。答えはシンプルで、私の仕事をラクにしてくれる道具のことだ。革新的なコンピューター像に心惹かれることもあるが、結局は昔ながらの仕事道具が今も最も信頼できる。私の場合、それはPCかMacだ。出張や旅先ではiPadが便利なのは確かだが、完全な代用品にはなりきれない。だからいつも結局、両方ともカバンに入れてしまう。

 「両方持てばいい」という考え方は、Apple自身がここ数年ずっと推し進めてきた路線だ。しかし同時にAppleは、この2つを絶対に融合させないと強調してきたことも忘れられない。2018年のステージでそれを明確に発表したことを、私は鮮明に覚えている。その時私は、「MacOSとiOSは融合するべきだ」と強く訴えたものだ。

 とはいえ私は、焦ってはいない。Appleの強みは、長期的な視野で一歩一歩確実に進めていくところにある。私もまた、ゆっくりと未来を見据えて待つつもりだ。とはいえ、心のどこかで「その時」はもう来てもいいんじゃないか、という期待が膨らんでいるのも事実だ。そして実際、その兆しはもうはっきりと見え始めている。

 最新のiPad Proに触れたとき、まさに自分が思い描いていた理想のMacが、違う形でそこに現れたように感じた。ただあと一歩、決定的な変化が必要だ。

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ほぼMacのiPadOS 26に「不気味の谷」の懸念

 iPadOS 26は、その融合がもはや始まっていることを示す強烈なサインだ。実際に開発者ベータ版を触ってみれば、「Mac的体験」がはっきりと形になっているとわかる。

 これまでAppleは、MacとiPadを明確に別々の世界として語ってきた。しかし今回のWWDCでは、iPadOS 26について、Apple自身が何度も「Mac的」という言葉を口にした。開けるウインドウの数は増え、マウスポインターも大きな丸から、馴染み深い矢印へと姿を変えた。

 メニューバーや、Macそっくりにファイル表示する「プレビュー」アプリ、フォルダ管理もほぼMacと同じように整理できる機能などが次々と搭載された。トラックパッド付きキーボードを接続した瞬間、この新しいiPadは今までになく柔軟で、マルチタスクにも優れ、「本気の仕事」に取り組めるようになったことを実感した。

 それでも、私にはどうしても一つ心配が残る。それは、このiPadが「まだ完全にはMacじゃない」ということだ。理想に近づくにつれて「不気味の谷」現象に陥りやすい。「よし、最高の作業環境が整った」と、iPadOS 26を使っている最中、ふとした瞬間に「あれ、やっぱりMacとは違うぞ」と気づいて作業の流れが止まる…。そんな場面が訪れるのではないかという不安が、まだ拭い切れないのだ。

 もちろん、そんな場面は実際には来ないかもしれない。それでも私の勘が告げているのは、この「限りなくMacに近い」新しいiPadOSが、肝心な部分でまだMacにはなりきれていない、ということだ。

ゴールは目の前だ──あと一歩、Appleよ走り切ってくれ!

 今や、多くのiPadとMacは共通の「Mシリーズ」プロセッサーを搭載しているし、キーボードやトラックパッドの操作感もほぼ同じになった。こうなると、もはやiPadがMacになれない理由は「Appleが意図的に方向性を分けている」以外には何も見つからないほどだ(逆にMacをiPad化するのは、タッチスクリーンやApple Pencilへの対応が求められるので、そう単純にはいかないだろうが)

 もちろん、すべてのMacアプリとiPadアプリを完璧に相互対応させ、両方を認識する新たなOSに完全融合させるのは簡単な仕事ではないだろう。しかし、Appleなら必ずそれを実現できると私は信じている。過去にもMacアプリはPowerPCからIntel、そしてIntelからARMへと何度も大きな移行を経験してきたのだ。それに比べれば、今回のハードウェアはまったく同じ。唯一の問題は、それぞれのアプリが目指す方向性が少し違う、という点だけだ。

 しかし、すでに両者のミッションは徐々に接近してきている。MacもiPadもiPhoneも、Liquid Glassを使ったビジュアルデザインはますます似通い、通知やウィジェットもどんどん共通化されている。

 私はAppleの全デバイスが完全に同じ動きをすることを望んでいるわけではない。だが、少なくとも持ち運びを前提としているiPadとMacBookに関しては、その重なりがかなり濃厚になっているのは明らかだ。


 付け加えると、私は「iPadのシンプルさ」を失くすべきだとは思っていない。Appleの言うとおり、普段はベーシックで直感的なiPadのままでいい。そして、ボタンを一つ押すだけで、プロ向けのマルチウインドウモードに瞬時に切り替わるような形が理想だ。

 ただ、そのマルチウインドウモードは「Macのようなもの」では不十分だ。私が望んでいるのは、完全で完璧なMacそのものだ。ノートパソコンを家に置いていけるようにしてほしい要するに、iPad Proと一部のMacBookシリーズは、完全に統合されるべきだ。

 こうした統合が必要な理由は、単に予算や荷物を減らしたいからというだけではない。もしAppleが本気で将来、Vision Proや、さらに軽量化されたスマートグラスを日常に浸透させようと考えているなら、製品ラインを整理して新たなデバイスを受け入れる余地を作る必要がある。

 私ならバッグに、iPad兼MacBookとして使える1台と、軽量版Vision Proだけを持ち歩くだろう。Vision、iPad、Macの3台すべてを毎日持ち歩くのは現実的ではない。どこかで何かを切り捨てる必要がある。

 もちろん、私はこれでも我慢強いほうだ。この変化をもう10年以上待ち望み、何度も文章にして訴えてきたのだから。次の一手を見るためならあと1年、いや2年くらいなら待つ覚悟はできている。ずっと待ち望んできた進化がようやく始まったことは心から嬉しい。

 Appleの最新の動きを見て、私の確信はいっそう強まった。でも結局のところ、今回(iPadOS 26)もまた、もう少し待つしかないんだろうなという気がしている。

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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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